ブウォシチェイェフキ日誌(2月8日)
〇サファアリラーンド
支給された装備しか使っていけないと思い、支給されたマガジンポーチとレッグホルスターが取り付けられる5.11のTDUベルトを使っていた。しかし、腰が痛くなってきたので私がいつも使っているベルト(弾帯3型にアグレッサーグループのベルトパット、陸自迷彩のHSGIタコマグ他)なら楽になると思い、試しに取り付けてみたら、ちゃんと付いたのでそのベルトで訓練を受けることにした。そのベルトにサファリランドのアタッチメントが付いており、インストラクターがアタッチメントを見て「サファアリラーンド」というので、「ホルスターもあるよ」とサファリランドのGLSを取り出すと、「おう、使え!使え!」とのこと。使って良いとのことなので3日目にして、いつも使っている装備となった。
使い慣れておらず自分が苦手としているレッグホルスターから解放され、GLSを使い始めた私は水を得た魚のごとく、スイスイとドロウを行う。ドロウが速くなり、エイムする時間を多く取ることができる。精度のよい射撃をするフィンランド人から「ドロウ早いな」と声を掛けられたので「ホルスターのおかげだよ」と伝えた。
GLSにはインストラクターも興味津々で、「グリップイコールアンロック」と片言英語を交えつつ仕組みを教えた。
〇ジャパニーズスタイルいいな!
タクティカルピストルコース最終日、バリケードシュートを行う。できるだけ体をバリケードに隠してターゲットを2発撃つ。バリケードとターゲットはそれぞれ5つあるため、各バリケードに移動して射撃を行う。計10発の弾を撃つ訓練である。インストラクターは「腕を伸ばしたままで移動すると位置がばれるし、バリケードに腕をぶつけるから腕を畳め。ジョン・ウィックでキアヌがやったような感じでもよい」といって、銃口を前に向けたまま持った手を腹部まで下げ、体に密着させて構えるコンプレッションレディの姿勢を取った。
私は国内のインストラクターから習った『SUL(スル)』を変形させたようなスタイルで腕を畳んで移動した。スルは銃口を地面に向けた状態にし、銃を持っていない手の上に銃を重ね、その両手を胸の上に置く構えだ(興味のある方はネットで検索してください)。しかし、射撃姿勢に移行する時間が掛かってしまうので、手は胸の上に置かず少しだけ前に突き出す。そうすることによって、射撃姿勢に移行する時間を短くすることが出来る。バリケードシュートが終わると、デンマーク人42歳(最年長)が「ジャパニーズスタイルいいな!」といって近づいてきた。ジャパニーズスタイルではないけどと思いつつ、コンプレッションレディと変形SULのジェスチャーを交互にしながら「こっちの方が速い」と伝えた。
デンマーク人は引き続き「お前はプローン(伏せ撃ち)に移行するのも早いな!」とのこと。こちらのインストラクターも教えてくれていたが、立った状態から伏せ撃ちまでの姿勢移行で、スクワットの動作でしゃがんで手をついて足を延ばして地面に伏せる方法を行っている。立っている状態から立膝をついて伏せるという方法もあるがこちらは時間が掛かる。
国内のインストラクターはスクワット動作からの伏せについてコツも教えてくれていたので早く出来ていたのだと思う。
デンマーク人との話を終え、他の訓練生の様子を見ると変形SULをやり出し始めてて吹いてしまった。
◯日本のアニメが好きなんだ
前から休憩時間にちょくちょく話していたが、ルールメイトとは別のイギリス人とキッチンでコーヒーを飲みながら話した。彼はMTP(イギリス軍の新型迷彩)のトラウザーを穿いていたので「イギリス陸軍かい?」と聞くとその通りだとのこと。何してるの?と聞くと、カウンターテロリズムの部署とのこと。「カウンターテロリズムだとSAS(イギリス陸軍特殊部隊)を連想する」と言ったら鼻で笑われた。SASのような直接的なことはしない部署とのこと。他にもSBSのモットー好きだよとか、そういえばイギリス軍ってグロック採用したよね、とかも話した。ちなみに軍隊で拳銃を装備するのは、幹部がほとんどであるが(市街地戦や特殊部隊は除く)、イギリス軍では衛生兵も拳銃を持つらしい。手当中に襲われたときにすぐ反撃できるようにとのことらしい。確かに背中に回した小銃を取るよりも拳銃抜いたほうが早い。彼の小銃を背中に回す所作が非常にリアルだったので、ニセ軍人ではないなと思った。
彼から「来月、日本に行くんだけど、どこ行ったらいい?」と聞かれ「沢山あるね」と答えると「アニメが好きなんだ。アキバハラ?」と言われたので「アキハバラだね。行かなければならない」と、本当にmustという言葉を使った。折角なのでどんなアニメを見たことあるのか聞いてみた。「クラナドかな。知ってる?」知ってるけど見たことはないと答えた。ツイッターで『顧客のイギリス人がクラナド知ってた』みたいなことを見掛けたがイギリス人オタクの間で流行っているのだろうか、ほかにも聞いてみる。「コードギアス好きだよ。見たことある?」と聞かれたのであると答えた。心の中では、ちょ、おま、イギリス人でコードギアス好きとか…とか思った。英語できないので伝えられない。「ポケモン見たことあるよ。キッズアニメだけど、ポニョもあるね」最初、ポニョのアクセントが日本語と違い過ぎたのと、『崖の上の』が抜けていたので分からなかった。「面白いアニメが好きなんだよね、監獄学園とか」唐突に出てきた『監獄学園』という言葉に笑いを隠せなかった。そして、『このイギリス人、練度高い』と思った。
〇ラピッドファイアとは…?
ドラム缶をバリケードにして、二―リング、プローンでの射撃、スイッチしての射撃など行い、そんなこんなで日が暮れてきた。訓練の最後はラピッドファイアということで、「諸君、マガジンに弾をフルロードだ」と言い渡される。これまで、5発10発しか弾込めをしていなかったがフルロードである。グロック19のマガジンに15発込める。訓練生全員がスチールターゲットの前に立つ。距離は7メートルほど。「ファイア」とインストラクターの掛け声とともに、訓練生が連射を始める。鳴り響く銃声の中、「マルファンクション!」私の使っているグロック19が給弾不良を起こしたので、不発の弾を排出する。タップラックバンだ。「マルファンクション!」またか。「マルファンクション!」「マルファンクション!」「マルファンクション!」――――合計15発のうち7発が不発。そのうち5発連続不発で『ラピッドファイアとは?』と思いながら苦笑して5連続マルファンクションを行った。ラピッドファイアの訓練というよりラピッドマルファンクションの訓練であった。するとインストラクターが「グロック17を貸してやれ」とグロック17を渡され、他の訓練生に見守られる中、ラピッドファイアを行った。なにこの居残り訓練感と思いながら無茶苦茶連射した。
〇ミスター…
訓練が一通り完了し、シューティングレンジから宿舎に戻る。インストラクターから宿舎のレクチャールームに集まるよう言われ、訓練生たちが集まる。デブリーフィングでもするのかと思ったが、どうやら修了書の授与式らしい。一番最初に私が呼ばれた。インストラクターに「ヘイ!ミスターマルファンクション!」と呼ばれるが好きであんなにマルファンクションをしたわけではない。訓練生すべてに修了書が行き届いてミーティングが終了したのち、インストラクターに自分の持ってきた装備を使ってもよいか確認を行う。「ああ、使え。いつもと同じ装備を使って訓練したほうがいいに決まっている。違ったものを使って覚えても仕方がない。なんだ?プレートキャリアか?」私はいやチェストリグだよと答えた。部屋に戻るとルームメイトのセルビア人もミスターマルファンクションなどと言ってくる始末である。「好きじゃないよ、マルファンクションなんて」というと「いや、他の奴らと違ってためらいもなくマルファンクションしてたからな」と言われる。
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