第2章 戦闘訓練

第5話 心身同期型戦闘機《オルター・チューン》

【地球:中央都市軍基地:訓練施設】

《戦闘訓練》


 マルチホールから先輩方と移動し、サッカーコート3面分以上はある馬鹿広い訓練施設に着く。そこには心身同期型の装置が天井から吊るされた状態で何本もあるのが見えた。

 前を歩いていた藤林ふじばやし先輩が第3期生の方に振り返る。


 「ここで諸君らの訓練を行う。そして、この天井からぶら下がっている装置を、今から諸君らに装着してもらう。」


 美大みとが不思議そうに装置を眺める。恐らくこの装置を見るのが初めてなのだろう。

 それに気づいた近衛このえ先輩が藤林先輩にどつく。


 「装着の前に、この装置について説明しないとでしょう!もう!」


 藤林先輩がごめんごめんと近衛先輩に謝り、改めて説明する。


 「この装置、心身同期型戦闘装備:通称“オルター・チューン”。遠隔操作で戦闘兵器にを同期するもので、感覚などのものも同様だ。例えば、戦闘兵器が傷を負えば痛覚を感じるし、能力を発動すれば戦闘兵器側で能力が発動する。まあ簡単に言えば第2の体だと思えばいい。」


 皆静かに聞いていたが、槐はこれが危険なものだとすぐに感じた。

 続けて藤林先輩が説明する。


 「デメリットもある。痛覚を感じるので同期を解除した際に、自分の体は傷ついていないのにまるで本当に傷ついたかのようにし感じるんだ。それがまだ指や腕、脚ならいいが、頭をやられると本当に死んでしまったと体が思い込みそのまま死に至るケースもある。」


 やはり...。えんじゅはこれを危惧していたのだ。なぜ感覚まで同期しないといけないのか。それが疑問だったので聞いてみることにした。


 「なぜ感覚まで同期させるのですか?」

 「最もな疑問だな」


 藤林先輩がまるで待っていたかのように言葉を放つ。


 「なぜ間隔まで同期するかについてだが、まず戦闘兵器自体機械なので、自分の体のパーツがどこにあるかを把握しやすくするため。それに伴い、能力を普段慣れた感覚で発現するため。」


 分からなくもない答えだった。単に機械だと能力を任意のタイミングで使うのが難しくなるということなのだろう。ならば、自分らがそのまま行けばいいんじゃないかとも思ったが、宇宙じゃ人はまともに戦えない。ましてや他の星となると問題が山積みだ。

 近衛先輩が端末を開き、今回の戦闘訓練の内容を確認する。


 「今回、君たちの訓練内容は心身同期型戦闘装備オルター・チューンを使い、獣型・模擬戦闘兵器の10機破壊。

  協力して戦ってもよし、1人で戦ってもよしとします。これは君たちの戦闘能力を再度確認するためのものになるので、くれぐれも手を抜かないように!」


 前回は適正テストの時で模型相手に個々の能力を計測していたっけか。今回はまるで競争だな。

 そして、俺たち5人は心身同期型戦闘装備を装着すべく研究者らしき人に案内され向かう。装備は頭や胸、腕、脚、手と次々に取り付けられる。すると頭につけたヘッドギアから声が聞こえた。近衛先輩だ。


 「同期を開始するわね。注意だけど、同期の際に体が浮遊状態になるけどじっと我慢してるのよ。じゃないと一生帰ってこられなくなるから。」


 サラッと恐ろしいことを言う。本当に大丈夫なのかこの装備。すると体が胸から浮き始める。


 「それじゃ、頑張ってね」


 一気に前が暗くなる。だけど意識ははっきりっしていて、次第に目の前が赤く光りだす。気づくと辺り一面真っ赤な大地に囲まれ、体を見ると黒と灰色の機械になっていた。

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