第十三章 モンランの世界へ

 まるでスケートをするように、平面の上を滑りながらナッティーと僕は『モンスターランド』に向かって移動していった。

『モンスターランド』の入口で、アバターの服を着替えることにした。ゲーム用の装備に変えたのだ。

 おしゃれなナッティーは女盗賊の衣装にチェンジした。頭に赤いバンダナを巻き、ティンカーベルのような緑のパンツルックに肩から小型のバズーカ砲を提げていた。僕の衣装はナッティーが与えてくれたもので、銀色に輝く甲冑のようなものを身に付け、背中には大きな剣を背負っている。どうやら僕は戦士のようだ。

『モンスターランド』では、自分のキャラを盗賊・魔術師・僧侶・戦士と四種類のキャラから選べる。


 僕らは秋生に成りすましたキャラがいると思われる。『モンスターランド』のステージ(stage)の奥へ進んでいった。

 ナッティーの話に寄ると、昨日見た時の、そのキャラはレベル90以上だったそうだ。このゲームの上限レベルは100だから――相手はかなり強い。

 ちなみに、ナッティーがレベル70で、僕はたった23しかない……これっぽっちのレべルで戦えるのか? こんな弱い僕のために、ナッティーが『不死身の甲冑』と『無敵のつるぎ』という強いアイテム(武器)を付けてくれた。

 ――とにかく、どんな敵か分からないが、秋生のキャラを使っていることは見過ごせないし、絶対に許せない!

 

 ステージも最終面に近い所まできた――。

 パソコンの画面で見るゲームの世界と違って、二次元に入り込んで見た『モンスターランド』は3Dのため、音や振動、熱まで感じて、真に迫るど迫力だった。

 リアル世界で僕は剣道部員だが、ゲームの世界で、果たして、その技が使えるかどうかは分からない。秋生の偽者キャラとも戦わなければいけないが、ここには凶暴なモンスターたちがウジャウジャいるのだ。

 時々、モンスターの咆哮ほうこうとどろいて僕はびっくりして首をすくめる。


「ナッティー、モンスターの声が聴こえるね」

「ここは『ソドムの魔境』っていうステージで、強いモンスターたちが棲んでいるのよ。前に秋生くんとクエストできたけど、モンスターがめっちゃ強くて……もう歯が立たなかったわ」

「大丈夫かなぁ……敵に会う前にモンスターにられそうだ」

「今はツバサくんも幽霊の仲間だけど、外部に肉体があるから殺られたら、ちょっとマズイかも知れないなぁ……」

 ナッティーの言葉で余計に不安が募ってきた。

「――もし本物の幽霊になったら、ナッティーに弟子入りするさ……あははっ」

「幽霊道をバッチリ仕込んであげるからね。うふふっ」

 など、と力なく笑っていたら、いきなり真っ赤な炎の球が飛んできて、目の前で爆発した。

 間一髪、避けられたが肝を冷やした。


 で、出たっー! 巨大なモンスターがこっちに向かって全力で走ってくるではないか!? ナッティーと僕は戦闘態勢に身構えた――。


    ※ クエストとは、ロールプレイングゲームにおいて、

     ゲームマスターから提示されたミッションを

     こう呼ぶ事がある。

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