第11話

 朝、女の子と電話できた。

 30歳を迎える童貞にとっては幸運な1日じゃないか。

 魔法使いになった俺は、自分にそう言って言い聞かす。

 今日は、良い一日を過ごせる気がする。

 なんか、少し勇気が出た。


 仕事が終わり会社の前であの人を待とうと思ったけどストーカっぽいのでそれは避けた。

 嫌われたら嫌だし……

 押しが弱いと言われればそれまでだが、こういうのは相手の好きな人がやってこそ押し倒れてくれるわけで……

 そうじゃない人が押し倒せば、逮捕されるんだ。

 こうしていっぴきの草系男子が産まれる。

 草食系男子を超える臆病な男。

 肉食系女子が苦手で肉食系女子が相手にしない存在。

 それが草系男子なのだ。


 そして、俺は怯える……

 どんなメールを送りどんな話をしてどんな行動を取ればいいかがわからない。

 デートの誘い方ひとつ知らない。

 なので、同僚であり友人である菊池にメールしてみた。


『普通の会話でいい』


 その普通がわからないのだ。

 悲しきかなそれもモテない男のさだめか……

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