超高級バイトの報酬

カゲトモ

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 スタイリッシュなシルバーの置時計は丁度バーカウンターの内側に付いていて、お客様からは見えないようになっている。時間の存在を意識させるなんて無粋なマネ、この店では絶対にしない。お客様には楽しい時間をたっぷり過ごしてもらいたい、がリンのモットーらしい。お蔭でこっちは完全に終電を逃してしまったけどね。

『ねぇお願い。悪友のよしみで、そうちゃんの力を貸して欲しいの。お礼なら弾むからッ』

 そんな電話で貴重な休みの朝(と言ってももう昼だったけど)目を覚ました。ベテランバーテンダーが急病で出勤できないのに、今日はVIP客の予約が入っているからどうしても俺に出て欲しいと連絡があった。それくらい俺の腕を信用してくれているって事、だったらいいけど。

まぁ今まで何度かリンの店でバイトしていたこともあるし、VIP客専用の特別室で専属バーテンダーもしたこともあるし。特に予定もなかったから別にいいんだけどさ。小遣いも出るし。

「うふふ、伏倉さんったらおちゃめーっ」

「はははっ男はいつまで経っても少年らしさを忘れちゃぁいけないからねぇ」

「伏倉様ったらかわいーっ」

「かわいーっ」

「くく、そうかいそうかい」

 革張りのソファで美女を両脇に抱えてゆったりと座るのは、ザ・金持ちって雰囲気の伏倉さんだ。とても気さくで楽しい人で、バーテンダーの俺にもにこやかに接してくれる。初めて会ったけれど良い人だ。サーブした酒に一度も文句を付けずに「美味い」って言ってくれるし。

「花菱君、ラストの一杯作ってくれるかい? なにか美味しいものを頼むよ」

「かしこまりました、伏倉様」

「この子達にも頼むね」

「きゃぁありがと、伏見様っ」

「いーのいーの」

 ラストの一杯と言ったら、やっぱりアレだよな。

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