第7話 移転門

 さて魔王が使った魔法陣は記録してあるのだけど、真似されないように暗号化してあった、ただ簡単な2桁の素数暗号なので、解析をするとすぐに解除できた。


 地魔法の術式だったので、水魔法の術式に書き換えて、更に16ビットの素数暗号をかけて読み解けないようにして、念のための安全対策をしておく。


 この星の魔王の大陸の反対側は海だ、そこに魔法陣を発動するけど、魔力を全部は解放しないようにキープ、すると魔法陣の展開先の様子が見えるようになる、いきなり異世界とつなげるわけにはいかないからね。


 前世界の魔王城だ、このままだと魔王城につながってしまうので、座標を移動させていく。


 広い範囲を探査すると、かつて拠点にしていた街を見つけた、ただ人間族やエルフやドワーフなどの亜人族がこちらに来ても、魔族と同じでたちまち行動不能になってたぶん最悪死んでしまう。


 さらに探すと自分が勇者召喚された神殿を見つけた、そこの残っていた前々世界の痕跡をたどっていくと地球の日本が見えてきた。


 この際、自分は魔王を抑えることに専念して、この星の開発は地球の日本に丸投げしてしまおうと思う、日本人ならいきなり魔族みたいに異世界に飛び込むことはないだろうし、何かあったらすぐに魔力をカットすればいいしね。


 もう自分や魔王が転生されてしまったし、今更、環境破壊とか外来種とか心配しても手遅れだから、あきらめよう。


 ただ自分が召喚された時代だと、ちょっとだけ不安だ、あの時代でもテラフォーミングできたかもしれないけど、50年ほど未来に時間軸をずらしてみる、安全対策でね。


 でも異世界の海と地球の陸地をつなげるわけにはいかないだろう、出来れば海と海をつなぐほうがよさそうだ。


 東京湾だといろいろとありすぎるだろうし、日本海側だとあの国とか、その国とかに近くて・・・あのその・・だし、やっぱり開国するなら、長崎の出島か伊豆下田・・っていつの時代のことやら。


 と、いうことで、20ⅩⅩ年の下田の海と、この星の海の海水面の高さを調整して、魔法陣を展開し移転門を開く。


 2つの世界の境界面が卵の薄皮のようなもので仕切られている。


 たしかに、直で異世界同士を移転門でつなげてしまったら、海水面はそれぞれ潮の満ち引きで変わるだろうし、大気圧も違うだろうし、とんでもないことになるのは目に見えているからこれも安全対策ね。


 魔王の魔法陣は、MPがみるみる減ってすぐに維持できなくなったけど、自分は魔法陣の維持のMP消費より自然回復のほうが早いみたいだ、このままずっと維持できる。


 水魔法でウオーターゴーレムを作って、移転門にある薄皮にぐぐっと潜りこむと、ポンと地球側に抜けた、海面上を東京湾方向に移動して、観察してみると50年後でもそれほど激変しているようには見えない。


 お!ついに見つかった、移転門も見つかったようだ、船やヘリコプターが集まってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る