東北本線(京浜東北線・宇都宮線)① 東京→田端→大宮→黒磯

父さんは今日、単身赴任先へ行くみたいだ。


色々起こったことも話せたし、また少し会えなくなるのは寂しいし悲しいけど…今までだって耐えてきたんだ、大丈夫だね。


春は桜、夏には向日葵、秋には薔薇、冬には梅が綺麗なとこに行ったし、また今年も行くだろうな。


おかしはない日が来ないようにちまちま食べよう。


飢えは感じてないし、まだそういう点で見たらいい方なのかな。


だから父さん、いってらっしゃい。

こうしてウグイスの鳴き声が聞こえてくる中、父さんは出発した。未だに切り替えのつかない僕を置いて。


日本はこういう人たちがいて成り立つ社会である。


経営にてこずっているところに送られ、愛おしい家族に会うことができず暮らす必要が出る人が一人は必ずいる。


しかし、そこでのドタバタした生活の中で、家族を忘れることはない。


神を信じないこの村でも…神を信じないと殺される都市でも…


名字に制限をかける村でも…条件を満たした名前じゃないと入れない街でも…


日が沈むまで自由自在にいつでもどこでも用をたす村でも…


幸運の証とされる赤い羽根を掴み取るまで帰さない村でも。


今回私が話すのはまた他のとある村でのこと。その村は川の河口にあった。


その村は西にある入り口しか見つけられてなく、東側から帰ってくるときは遠回りしなければならなかった。


バラエティはとても面白く、便乗したこともあった。


皆がバラエティしか見ないもんだから、それ以外の裏話などの情報が入ってこない。


裏話もきいてみたいなぁ…


と思ってたらやっときた。裏話。


世の中はこんなにおもしろいことばかりだったのか。


「さぁ、一旦まぁ、新政府の方行ってみるか」と思い立ち、都心の方行って見た時、


大きな宮殿が見えてきた。


トロトロ歩いてた足も少し気力が湧いたのか少し早足になった。


「日が沈む前にあの大きな宮殿に行かなきゃ…!」


帰りのこともあるので早く着きたい。そろそろ着くはずだ。


白い花の丘を右に見てその宮殿に入った。


そしたら紳士な人たちがお金もちなのだろうか、レベルの違うことを話していた。


お菓子もクッキーみたいな安いものは話に出てこず、もっとたかそうな名前のものばかりで話についていけない。


とりあえず道がわからなくなるから日が沈む前に帰りたいと考え、わたしは足早にそこを去った。帰るのはわたしだけだったみたいだが。


出たところから西の方を見ると一本木があり、その下に橋が架かっていた。


その橋は昔ここに川が流れてた時に作られた橋で、もうここには川は流れていないらしい。


野菊も近くに生えていた。


ホームステイ先に帰ると小さい子供が現地語で「ママだ!やった!ママが帰ってきた!」と言っていたらしい。単身赴任は自分だけじゃないのかと安心した。ここから先はその親子と私の会話。日本語に翻訳不可なものは【】でくくらせて予想を書かせてもらう。


「おやまぁ、こんなにでっかくなって。」


「ほら!近くにコガネムシいたよ!」


「じいちゃんも言ってたわよ。小さな虫でさえ大切にできない子は偉大な人になんてなれないって。にがしてきなさい。」


「はあ〜い…」

「しかししばらく観てたいな。こんな綺麗なコガネムシ初めて観たな、どこで捕まえたんだ?」


「いや…最初はスズムシを捕まえようとしたんだけど、目の前で逃しちゃって…あ、場所はあの宮殿のあたりだよ!」


「まさか宮殿に網で傷つけてないわよね!?」


「大丈夫だよ、宮殿の真下じゃなくて近くの丘の下だから。」


「ならよかったわ…」

「それって宝石みたいなあの白い花が咲いてる?」

「うん、そこだよ!その近くに【宗教施設】があるんだ!」


「う…『寺院』ってなんていうんだろう…?」


「『ジーン』って何?」

「あ、日本でいう宗教施設みたいなもんだ。なぁ、そろそろ夕飯にしないか?」

「釜に全て入ってるわよ。酒もあるわよ。出す?」


「片方出してもらおうか、お願いできる?」


「焼いた【主食】もあるわよ。もう出す?」


「んじゃそれも、お願い。」

「そう!今日はあの橋の先までいったんだよ!」


「茄子の煮物ももう出しちゃうわね。」


「あ、茄子に塩をかけてくれるか?」

「僕の話も聞いてよ…」

「はいはい、どうした?」


その時だった…黒い影が一瞬窓からそーっと見えてきたのは。

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