揺れる鞦韆

@ohchan

メール

母親からメールが届いた。

『明日そっちにお邪魔します』

たったそれだけの素っ気ない電子文字を見つめ俺の頭の中には色々な答えが思い浮かぶ。

俺は飯田一真(イイダカズマ)25歳、世間からすればもう立派な大人の部類に入るが俺は違う。一人暮らしはしているが仕事はしておらず、親の仕送りだけで生活をしている唯のニート。

しかしこんな事になってしまったのにもきちんとした理由がある。

昔から他人と関わる事が苦手だった俺は常に一人だった。

それがいけなかったのかもしれない。まともに他人と会話をして来なかった俺はついにコミニュケーション障害と言う壁にぶちあたってしまったのだ。人から何を言われても「うん」とか「あぁ...」とかしか返事を返せない上に、一番大切な、目を合わすことすらできない。

そんな俺が仕事の面接で受かるはずもなく、こうしてダラダラと親のスネを齧って生きているのだ。

そしてそこへ何の前触れもなく届いた一通のメールは俺の心の奥底にしまい込んでいた不安を一気に解き放たたせるような恐ろしい存在だった。

引っ越した当日以外は1度も家にやって来なかった両親からの急なメール。きっと「もう仕送りをやめます」とか「もう歳なんだから甘えてないで働きなさい」とかそんな事を言われるんじゃないかと内心焦りが出る。

しかし俺はそんな小さな不安と焦りを隠すように、

『わかった』

とたった一言を打ってメールを返した。

だがこの一通のメールによって俺の人生が変わることをこの時の俺はまだ知らない。

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