行間6-1 -緋の胎動-
『というわけでー、君には修行の旅に出てもらいます♪』
「……は?」
「テメェ……どこから喋ってやがる?」
ここがどこなのかはまるで見当もつかない。というのも
ただ覚えのある妙な違和感……というよりも怖気のようなものを感じる。
『アハハ、ゴメンねー。
声は洞窟の奥の方から響いてくる。
『うわ……乙女の秘密に迷いなく踏み込む系?
「言ってろ。テメェで勝手に連れてきたんだろ」
洞窟全体を覆うように何やら不穏な力を感じていたが、思ったよりあっさりと彼はその場所に辿り着くことができた。
「何だ……これ?」
目の前の光景に思わず目を見張る
繭だ。淡い光と骨の髄まで響くような鼓動を放つ巨大な繭が洞窟内の空洞。その中心に鎮座していた。
「……ッ」
よく見ると繭の中心にうっすらと人影が見える。鼓動の源――それが『
問題は繭の中の彼女が今までの彼女ではないという事だ。
「……誰だ?」
『ん?
確かに普段は必ず複数体潜んでいる彼女の分体の気配が感じられない。この場にいる
「フンッ、まるで虫だな」
『アハハ、確かに。さしずめ今は
「
『Crimson Charge!!』
右手に握りしめた鉄牙の大剣が音を立てて軋み、怨嗟と憎悪を凝縮した紅い炎を吐き出す。
『コッワ……まぁ確かに今の
『……ッ!?』
殺気……それも全方位から。
否応なく瞬時に全身が強張った。
『その子が許してくれるかにゃ?』
気付けば洞窟内のあらゆる場所から牛を思わせる頭蓋骨が浮き出ていた。そしてその全てが存在しないはずの眼球で
『……牛野郎』
アステリオス・
かつては
(なるほど、ここはコイツの
考えてみれば彼女にとってここ以上に安全な場所は他にない。入り口さえ閉じてしまえば外界から干渉する術は無いに等しく、仮に侵入できたとしてもそこはもうアステリオスの手中。どうにでもできる。
『どうする? 今の
『……』
『フフ、意気地なし♪』
「うるせぇ。運試しは御免なだけだ」
『アハハ! まぁそもそも運がよかったらこんな所にいないよね♪』
「……」
図星を突かれ、
「で、修行ってのは何のことだ?」
『
「……くだらねぇ」
サバイバルゲームだか何だか知らないが、そんな事は
『でもさ~、現実問題、その程度の実力じゃ今の
「……」
明らかに挑発だ。だが、紛れもない事実でもある。
死を恐れていてはこの身に自由はない。この先も一生。
だから強くなるしかない。強くなって、目の前の悪魔をぶっ潰す以外に自由を得る道はないのだ。
『あ、そうそう。ちなみに最後まで生き残ればとっておきの商品もあるんだってさ。この世の全てを薙ぎ払える力。君が敗北した吉野ユウトと同じ力だよ♪』
「……」
悪魔の囁きが
『ま、興味があるならご自由に。道は作っておくから』
「これは……」
『ニヒヒ、優しい優しい
触れた瞬間、
それは死と再生を司り、永劫回帰を体現する力。
名を――ウロボロス。
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