第1章 剣乱魔境 御巫総本家 -Break the Chain for a Stray cat-
Prologue 涙雨の逃亡者 -Holder of the truth-
豪雨。
横殴りに降り注ぐそれは彼女の全身を容赦なく打ちつけ、なけなしの体温を無情に奪っていく。
「……う……ッ……」
足がおぼつかない。視界の右側は真っ赤に染まっている。
もはや意識を保っているのがやっとだった。
「つたえ……ない、と……」
早くしないと、手遅れになる。
その事実だけが彼女の体を前へ突き動かしていた。
しかし、もうそれも限界。
気付けば体は地面を這っていた。受け身も取れず倒れたのに、気付かないどころか痛みさえ感じない。
「は、や……く」
追っ手を撒くのに血を流しすぎた。彼女の歩いた後には、血の跡が尾を引いている。そして今もなお、全身に刻まれた刀傷からは血が流れ続けているのだ。
ここはまだ安全圏ではない。この雨が血跡を消してくれることをただ祈るしかない。もしも辿られれば、すぐに追いつかれる。
「
カツッ、と背後で足音がした。
しかしその時にはもう、彼女には後ろを見る気力さえ残されてはいなかった。できることは、ただ目の前の虚空を掴むことだけ。
「……ユウト、く……ん」
そこで逃亡者・
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