蒼眼の魔道士(ワーロック)2 -Eyes of Moon-weiß-

神島大和

序章 魔人再起 -Wake up the world-

Prologue 目覚めの時 -Break Down-

 表が騒がしい。

 魂震わす憎き衝動が動かなくなっていた石の心臓を脈動させる。



『行くぞガイ……一緒にあいつをぶん殴ろうぜ!!』

『いいねいいね最高だッ! やっぱり君に賭けて正解だった!!』



 表側で隠された裏側。歴史に忘れられた存在に血液という名の灼熱の潤滑油が巡り、岩と同化した肉体が歪な悲鳴を上げた。



『私は絶対に負けない! 仇を取るまで、絶対に!!』

『これが、私の全て!! しっかり受け取りなさい!!』



 激動の中で踊る支離滅裂で強烈な人間の感情ねがいは、止まっていた思考を揺さぶり、太陽より燃え盛る炎を瞳の奥に宿す。



『どうして……ッ! そこまで人を想えるのに、あなたは寄り添おうとしないんですか!?』

『君にはわからないだろうね。選ばれないことの恐怖が! 冬馬は僕の全てなんだ! 彼の道具になれない僕に……価値なんかないだッ!!』



 それはまるで精巧な機械のように、必然と必然が噛み合い歯車と為し生み出した、一切無駄のない『偶然』。



『全てを清算できる力がここにある。神の力とやらに頼って、魔法きせきそのものを殺す』

『絶対に超えさせない。この一線は絶対に超えちゃダメだ!! ぶん殴ってでも、俺はお前を止めてみせる!!』



 数多の時を超え、『』は枷から解き放たれる。


「……殺、す」


 世界を狂わすほどの奇蹟の応酬が、飽和する人間のカルマが、の存在の憎悪を奮わせる。

 決め手となったのは蒼い瞳を持つ、唯一にして最強の魔道士ワーロック




『世界は……神の奇蹟は……私が殺す!!』




 これより始まるのは、奇蹟が呼び寄せた奇蹟を殺す物語。

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