11話 ダイナミックなスノートレーニング!



「素蓋さん! 雪ですっ! 雪が降ってますよーっ!」


 朝、ティフシーがオレの部屋に飛び込んできた。今日はモコモコしたトレーナーにスカート、スポーツ用ストッキングの冬装備だ!


「ティフシー、その服ウサギっぽいね。似合ってるよ~!」


「え、ほんとですか! ありがとうございます! ウサギの脚の筋肉って可愛いですよね~」


「可愛いポイントそこ!?」


 ティフシーは『えへへ~』と笑ったあと、ハッとなる。


「そうでした! 素蓋さん! 雪ですよ! 外見ましたか? 久しぶりに雪が降ってるんです!」


「え、雪?」


 カーテンを開けてみると、一面真っ白だった。


 この世界って、雪降るのか!

 

 一年中真夏だと思ってた!


「素蓋さん、一階に来てください! お客さんたちがもう集まってるんですよ!」


「え、今日は閉店じゃないの!?」


「違いますよ~! 今日は雪が降ったので、スノウトレーニング大会です!」


 ティフシーはオレに長袖のジャージを渡してくれた。


 雨風を防いでくれそうな生地で、裏地はモコモコ。暖かそうだ!


「シュリカさんが『素蓋くんは寒いときの服持ってないから、渡してあげて』って言ってましたよ!」


「さすがシュリカさん! ありがたいぜ!」


 オレはさっそくジャージに袖を通した。動きやすくて、ぬくぬくだ!


「あと、『優勝したらそれはタダでいいわ』って言ってましたよ!」


「条件つきだったーっ!」


 さすがシュリカさん! 抜け目ないぜ!


「素蓋さん、応援してますよ~! かっこいいところ見せてくださいね」


「おーっ!」


 よし、ちょっと本気出すかな!


 スノウトレーニングって何するかわからないけど!



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ハッハッハ! いまからスノウトレーニングを行うぞ!」


 マッチョたちや美女たちは近くの公園に集まっていた。みんなマフラーや耳当てをしてるけど、Tシャツだったり、タンクトップだったり、いつもとあまり変わらない軽装だ。


 そんなにハードに動き回るのか?


「ルールは簡単! 雪を使って一番ダイナミックなパッションをアートしたペアが勝利さッッッッ!」


「どういうこと!?」


「つまり、雪を使って、一番すごいことをしたら勝ちってことですよ~」


 隣にいた女の子が答えてくれた。


 ちょっと太めの眉に、ほんわかした童顔。背も低くてかわいい。


「素蓋さん、よろしくお願いします~! わたしはフルールっていいます~!」


「よろしく、フルール!」


 フルールはノースリーブのニットを着ていて、胸のあたりが雪を詰め込んだみたいにふんわりと膨らんでいる。


 ふかふかのおっぱいだ!


 見ていてほんのり温かくなるような、ほんわか系美少女。童顔に巨乳のバランスが最高だぜ!


「ハッハッハ! 好きな相手とペアを組んだら開始さッ! レディイイイイイッ! スタートォオオオオオオオオオオッッッ!」


「フルール、よかったオレとペア組まない?」


「はいっ! 素蓋さんと一緒なら頼もしいです~!」


 オレは店のイベントで活躍してるので、けっこう顔を知られてるみたいだ。


 期待に応えるぜ!


「雪ですごいことするって、たとえば、デカイ雪だるま作るとかでいいのかな?」


「そうですね~。トレーニングになるような、ダイナミックなことをすればいいんですよ~!」


「ダイナミックなこと?」


「はい。例えば、町中の雪をぜんぶ一カ所に集めて、迷路を作るとか~」


「国家プロジェクトかっ!」


 思ったより数千倍ダイナミックだーっ!


「もう少し簡単なのですと、雪だるまを食べるとか~?」


「それはトレーニングなのか!?」


「そ、そうですよね~。それなら、公園を走り回って、雪を溶かして水にするっていうのはどうですか?」


「トレーニングだけども!」


 雨の翌日に校庭を馴らす運動部かっ!


「フルール、一度ダイナミックから離れて、他のペアよりちょっとすごいくらいのことを考えよう!」


「はい~! 簡単なのがいいですね~!」


 そして、オレたちのダイナミックなスノウトレーニングが完成した!



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「発表タァアアアアアアアアアイムッッッッッ! まずは、ボブ&ジョンソンペアァアアアアアッッッ!」


「ヒューッ! グッドトレーニング!」


「ナイスマッスルーッ!」


 みんなが拍手する中、マッチョ二人組が巨大な樽を転がしてきた。


「僕たちが作ったのはシャーベットプロテインドリンクさっ!」


「町中の雪を集めてきたぜ~っ!」


 二人が蓋を開けると、中にはピンク色のシャーベットが詰まっていた。

 

 たしかにすごいけど!


「それって雪だよな!? 衛生面は大丈夫なのか!?」


「問題ないさ! 犬のフンが落ちてたけど、使ってないよ! ちゃんとその真横の雪を使ったのさ!」


「真横なの!? せめて離れたところから取れよっ!」


 ぜったい飲みたくないな!


「ハッハッハ! では、次のペアァアアアアッッッ! マーリン&ベネア!」


 今度は美女二人のペアだ。


 二人ともTシャツにマフラーというマニアックな格好をしてる。


 うん、悪くないぞ!


「ふふっ、私達はかまくらを作ったわ!」


 二人が指さしたところには、綺麗な雪山があった。


 形は綺麗な半円。なかなかすごい。


「ちなみに、ポイントはてっぺんの小さな雪玉よ。上から見たとき、ある形に見えるように作ったわ!」


 おっぱい型!? あざとい! あざといぞこのペア!


「ワオ! これはすばらしい芸術だな! うん、これは素晴らしいぞ!」


 進行役のマッチョが鼻の下を伸ばして絶賛した。


 やかましいわ!


「ハッハッハ! 次は素蓋&フルールゥウウウッッッ! 何を見せてくれるんだい!?」


「オレたちはコレだよ」


 オレは公園の外を指さした。


 坂道に、何か所か雪が盛ってある。


「いまからオレは板に乗って、この坂道を滑る。もちろん、雪山の障害物をぜんぶ避けるぜ!」


「なるほど。そいつはいいトレーニングだ! しかし、素蓋にしてはインパクトは低めだな! ハッハッハ!」


「そうね、滑るだけなら私たちにもできそうだわ。シュリカの店の素蓋くん、噂に聞いてたほどじゃないわね」


「下半身のトレーニングとしては、いい線いってるんじゃないかしら? 三位には入れそうよ」


 マッチョと美女たちはイマイチな反応だ。


 たしかに、滑るだけなら普通の人間でもできるからな!


 でも、すごいのはここからだぜ!


「じゃあ、さっそく見せるよ」


 そう言って、オレはフルールをお姫様だっこした。


 小さな背中に、もちもちした感触の太もも。温かくてふんわりと柔らかい。


 雪の妖精を抱えてるような気分だ。


「な、なにぃいいいいいいっ!!! フルールを抱きかかえたまま滑るだとぉおおおおお!!!」


「下半身だけじゃなく、腕のトレーニングまでしようというの!? そんなことができるのかしらっ!!」


「バランスを取るために、下半身にもヘビイな負荷がかかるぞ! 並のマッスルではできない芸当だッッ!」


 フルールは少し顔を赤らめて、オレにしがみついた。


「お願いします~っ!」


「おう、行くぜ!」


 オレは坂道を一気に加速した。


 板を左右にコントロールしながら、雪山を避けていく。


「何ィイイイイイイイイイイイ!」


「素蓋くん、かっこいいわっ! 腕も足もワンダフルなマッスルよ!」


 上にいるマッチョや美女たちの声を聞きながら、オレはどんどん加速していく。


 雪山を飛び越えて、空中で一回転して着地!


 カーブを曲がると、滑れるところまで滑っていく。


 最後にキュッと止まると、公園だけでなく、道を歩く人たちからも歓声があがった。


「ウワォオオオオオオオオオオオオッ!!! とんでもないスノウマッスルが現れたァアアアアアーッッ!」


「あのプリティマッチョに抱かれてる子はだれなのっ? 私もあんなマッスルに抱かれたいわ!」


「雪道をあんなダイナミックに下りてくるなんてーッ! 最高にホットなマッスルだぜぇええッッ!」


「すごいマッチョを見れてラッキーだわ! あんなホットなマッスルを見せつけられたら、今夜はストーブ無しで過ごせそうよ!」


 フルールはほんわかした笑顔でオレを見上げた。


「素蓋さん、さすがスーパーマッチョですね! すごい楽しかったです~!」


「まあね~! オレも楽しかったよ。じゃあ、そろそろ下ろすよ」


「あ、はい。あの、自分で下りますねっ」


 フルールがオレの腕の中で、体をひねった。


 その瞬間。


「!!!!!!!!」


 オレの手が偶然、フルールのノースリーブの脇から、ニットの内側に滑り込んだ。


 ニットとおっぱいの間。


 それは、ロマンへの入り口だっ!


 ふんわりと温かく、指が吸い込まれそうなほど柔らかい肌。


 左手から全身に伝わってくる幸せな感触!


 うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


 この幸せな時を冷凍保存したいっ!


「あ、あのっ、素蓋さん」


 フルールはオレを見つめると、顔を真っ赤にして言った。


「素蓋さんて、やっぱりダイナミックな人です~っ!」


  

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