006 直次の過去

中学2年生の頃だった。僕には、好きな女の子がいた。名前は、蒔絵。幼い頃からの幼なじみで、最初は遊んでるだけだったが、好みがあっていたせいか、どんどん距離が小さくなっていった。今から思っても、あれは恋だったと思う。さすがに、キスとかまでしかしなかったが、よく一緒に手を繋いで帰っていた。

そんなある日、


「ナオナオ、一緒に帰ろ」

「だから、その呼び方はやめてって」

「照れてるくせに」

「ウグッ……」

「さっ、帰ろ」

「うん」


「そういえば、ナオナオは、この後何かあるの?」

「特にないから、遊ぼ」

「そだね」


そんなたわいもない話をしていた。あんなことさえなければ。


「そーいえば、ナオナオって、成績いいよね」

「そう?宿題ちゃんとやってるだけだけどね」

「え~、それだけで?」

「うん」

「うらやましいなー。ねぇねぇ、今度、勉強教えてよ」


蒔絵が後ろ歩きをし始めた。


「うーん、別にいいけど、責任とらないよ?」

「うん、それはいいよ!」

「マキエ、後ろ歩きって怖くないの?」

「慣れたから、あんまし怖くないよ」

「そう、……。あっ、危ない」

「?」


もともと車がそんなに通らない道だったからか、油断していた。

向こうの方から、右に左に行ったり来たりしている車が来ていたことに気がつかなかった。蒔絵が横断歩道を渡ろうとして、2歩ぐらいいったところで、

蒔絵が飛ばされた……。

一瞬、何が起こっているかわからなかった。

それから、

蒔絵が引かれたのだとわかった。


誰かが救急車に通報したらしく蒔絵の一命はとりとめた。

逆にいえば、一命しか取り留めなかった。今は、都内の病院で意識を失ったままの状態でいる。

高1になった今でも、7日に1回は、その病院に行くようにしている。蒔絵がやせ細って行く姿を見たくはないのだが。

To be continued……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る