第10話 同居のための書類が揃った

月曜日の午後、携帯に未希の父親から連絡が入った。国民健康保険料が未払いなので未払い分を払わないと新しく未希の保険証を作れないと言われたとのこと。未払い分はと聞くと10万円あればいいという。未払いはこちらの責任ではないから、50万円から差し引くがいいかというと、しぶしぶ承諾した。


それでその日の午後8時に品川駅で未払い分を渡す約束をした。お金を渡す時に10万円の領収書をもらったのと、銀行口座の催促をした。通帳はすぐに出来たが、カードが届くのを待っていると言っていた。また、転出届を出して書類を貰って来ているとも言っていた。


その週の金曜日の夜遅く、未希の父親から携帯に頼まれていたものがすべて揃ったとの連絡が入った。土曜日の朝10時に品川駅で落ち合うことにした。そして、コーヒーショップで約束した銀行口座、健康保険証、転出届、同居承諾書などを受け取った。


受け取ったものの内容を確認して、キャシュカードの暗証番号も聞いた。未希の生年月日0320だという。保険証の生年月日は3月20日となっていた。その代わりにキャッシュコーナーで引き出してきた残金35万円を渡して領収書を受け取った。


「これで未希はお前のものだ。せいぜい娘を可愛がってやってくれ」


「もう、未希とは会わないでもらいたい。連絡したいことがあれば俺の携帯へ入れてくれ。こちらも何かあればあんたの携帯に連絡する。それから未希の荷物を引き取りたいので、引越し屋を手配するからまとめておいてくれ」


「分かった。まとめておく」


コーヒーショップの前で父親と別れた。後を付けられては困るので、改札口から駅に入るのを見届けた。俺の後はつけられなかったと思う。乗り換える駅でも何回も見まわして確認した。あの父親ならアパートまで押しかけて来ないとも限らない。


まあ、ああいう怪しいやからには今の仕事で慣れている。お客様相談室にいるが、いわゆるクレーム対応だ。本当に真面目なクレームもあるが、クレーマーからや因縁をつけるためのクレームもある。もう3年もやっていると大抵の対応はできるし、交渉のポイントもわきまえている。


今回の交渉ではそれが役に立った。俺の会社名も明かさなかったし、住所への郵送もさせなかった。万全の対応はしたと思った。下手をすると淫行をネタにゆすられかねない。相手が父親だからなおさら面倒だ。後々のために会話もすべてテープに隠し撮りをしておいた。


クレーム対応のために社外で人と会う場合は必ず二人で会うし、会話を今後の商品開発のために使うと断って会話を録音する。すると先方も言い方が慎重になる。今回は隠し撮りだが、内容が内容だからもろ刃の剣だ。


アパートに帰ったのが丁度お昼だった。1階のコンビニでは未希が月曜日からアルバイトを始めていた。


アルバイトを始めたころから、未希は化粧をするようになった、眉の手入れを教わった時にひととおりのものを買い与えたがそれを使っている。薄化粧にして大事に使っているとのことで、化粧をするととても可愛くなったと褒めたらとても喜んでいた。意外と単純な気のいいやつだ。でも化粧のセンスが良くて本当にとても可愛くなった。


買ってきた弁当を部屋で食べていると、未希も弁当を持って入ってきた。お昼ごはんは期限切れのものを安くしてもらって食べていると言っていた。1日1000円の弁当代は今も未希に渡している。1時まで休憩時間だという。


「一緒に食うか? お湯を沸かしたらお茶を入れてくれ。うまくいった。まずは飯を喰ってからだ」


未希はお茶を入れると黙って弁当を食べ始めた。食べ終わると俺の容器も片付けてくれる。


「これで同居するのに必要なものはそろった」と預金通帳や保険証などを並べて見せて、通帳、カード、印鑑、保険証を未希に渡した。未希はそれらを整理ダンスの自分の引出しにしまった。


「親父さんに未希の荷物をまとめておくように頼んでおいた。後で引越し屋に頼んで取ってきてもらうようにするから」


「ありがとう。お金がたくさんかかったでしょう」


「締めて50万円だ」


「私の身体で返せばいいんでしょうか?」


「そうだな、それでいい。ただし、絶対に誰にも話すな! 未希は17歳だ。これがばれると俺は捕まって刑務所行になるかもしれない。そうすれば同居もできなくなる」


未希はそれを聞いて2度も頷いた。同居を続けたければ誰にも話さないだろう。俺はこれで未希を当分やりたい放題できる。ラブドールを買ったと思えば安いものだ。ラブドールも結構高価だ。


「近くの区の特別出張所があるから、転入届と保険証の住所変更などの手続きをしよう。シフトは土日以外ではいつが空いている?」


「20日火曜日の午後が開いています」


「それなら、火曜の午後に休暇を取るから、一緒に行こう」


「分かった」


「今日の夕飯は俺が作るから一緒に食べよう。弁当は買わなくていいから。何時に終わる?」


「8時」


「準備しておくから」


未希は頷いて下へ降りて行った。顔を見ると微笑んでいるように見えた。まあ、手続きもできそうで同居はなんとかなりそうだ。先週、未希の父親と話を付けてきてから、未希の俺に対する態度が変わったような気がする。


そういえば、寝る時も今までは手招きしないと来なかったが、このごろは未希の方からそばに来るようになっている。それから、いままでは終わった後に背中を向けて寝ることが多かったが、このごろはこちらを向いて眠ることが多くなってきた。抱きついたりはしないが身体を近づけて眠っている。


そうすると未希の寝顔が見えるが、以前よりも安らかな顔をして眠っている。それが可愛くてじっとみていたこともある。結構お金がかかったのでこれくらいはいいだろう。


夕食の献立は野菜炒めにした。ここのところ、野菜を食べていない。冷蔵庫に野菜がないのでスーパーへ買い出しに行った。6時にご飯を炊いておく。7時半ごろから作り始める。


丁度8時に未希が帰ってきたころに出来上がった。これじゃあまるで主婦だ。未希は帰ってくるとすぐにテーブルに腰かけた。アルバイトで疲れているようだ。


「疲れたか? 無理するなよ」


「うん、少し疲れた。夕飯ありがとう」


「すぐに食べよう」


未希はお腹が空いているのか、すぐに食べ始めた。二人共、無言で食べ終わる。あとかたづけは未希がしてくれた。疲れているなら俺がするからと言ってもさっさと洗いを終えた。


明日のシフトは昼からだというので、今夜はゆっくりできると言うと、未希は頷いた。こんな反応は初めてだった。それにこのごろは少し会話が増えてきた。今までは頷くだけだった。


風呂から上がってベッドで未希を待っていると、バスタオルを身体に巻いて未希がやってきて、横に座った。俺に身体を寄せてくる。「どうしたんだ今日は?」と言うと抱きついてきた。こんなことは初めてだった。


未希はぐったりして寝ているが、こちらを向いて俺を見ている。抱きつくほどには力が残っていないようだ。でも俺の手を掴んでいる。


「どうした」


「ありがとう」


「良いんだ、気にするな、このとおり身体で返してもらっている」


未希は頷いて、すぐに眠ってしまった。コンビニのアルバイトで疲れているところにやりたい放題されたからだと思う。死んだように眠っているが、安らかな顔をしている。それを見ていると罪悪感が少し薄れる。

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