第20話 妖異狩りで儲ける人たち
腹が膨れた俺たちは冒険者ギルドに訪れていた。
手軽にこなせる仕事を見繕うためである。
現在俺の手元にはそれなりの日数を不自由なく暮らせるくらいの金があるが、いつ突発的な事故が起きて大きな出費が発生するか分からないし、街に立ち寄れる間は少しずつでも堅実に稼いだ方が良いと思うのだ。
金持ちを目指しているわけではないが、金は幾らあっても困るものじゃないからな。
そういうわけで、先程からフォルテたちと手分けしてボードに貼られた
驚いたことに、この冒険者ギルドで斡旋している
何でこんなに仕事内容が偏っているのかと職員のお姉さんに尋ねてみると、この街の周囲に広がっているアマヌ平原は何もない土地なので、薬草なんかの物資は基本的に他の街から仕入れているのだという答えが返ってきた。それに加えてダンジョンで調達できる物資の方が遥かに需要が高く商売になるので、自然とそちらをターゲットにした調達任務の方が数が多くなってしまうのだそうだ。
確かに商売としてはそれが正しい考え方なのだろうとは思うが……
この街では、楽な仕事は期待できそうにないな。
しかし、せっかく街に来ているのだから、多少は所持金を増やしておきたいという気持ちもある。
ここは、なるべく楽そうな内容の
とはいうものの。
妖異の知識が全くない俺が受注書を見ても、その内容が楽なものなのかどうかは全く分からない。
バイオレットヘッジホッグの針の調達依頼。
ロックリザードの肉の調達依頼。
スクリームバードの肉の調達依頼。
名前から何となく蜥蜴かな、鳥かな、くらいの想像はできるのだが、分かるのはそれくらいで肝心の大きさだとか特徴については全然予想が付かない。
そういう情報を少しくらいは書いておいてくれればいいのだが。受注書の内容は必要最低限のことしか書かれていないので本当に不親切だ。
仕方ない。フォルテたちに楽そうな内容の仕事を選んでもらおう。
「なあ。俺は妖異の名前を見ても何なのか分からないから、あんたたちの方で仕事を選んでくれないか?」
俺の言葉に二人は頷いて、受注書を見て回り──
少しして、それぞれ目に適ったらしい受注書を一枚ずつ持って俺のところにやって来た。
「これなんて、どうかしら。割と有名どころだと思うわ」
フォルテが選んだのは『ラミアの肉の調達依頼』。ラミアは妖異の中でも有名な部類に入るらしい。
ラミアの名前は、俺もファンタジー小説で読んだことあるから知っている。あれだろ、人間の女の上半身に蛇の下半身が合体したいわゆる蛇女と呼ばれている生き物だ。
それの肉の調達って……一体何処を食用にするんだ? 一歩間違ったら人肉と同じような扱いになると思うのだが。
妖異の肉は栄養豊富で美味いといっても、人肉は流石に食べたくないぞ。俺は。
「一応、手堅いところを選んだつもりです」
一方ユーリルが持ってきたのは『バレット・マンドラゴラの調達依頼』。マンドラゴラといえば普通は植物を思い浮かべるものだが、こいつは植物に限りなく近い性質を持ったれっきとした妖異らしい。
マンドラゴラって……確か、地面に植わってるやつを引っこ抜いたらとんでもない叫び声を上げる植物だったよな。
ダンジョンの中に畑でもあるのだろうか。いまいちイメージが沸かないな。
ユーリル曰く、このバレット・マンドラゴラはマンドラゴラの名前は付いているが叫び声は上げないとのこと。
俺は二枚の受注書を見比べて、考えた後、『バレット・マンドラゴラの調達依頼』の方を請けることにした。
ラミアは人間の上半身を持ってる分知能が高そうだし、その分叫ばない植物よりも手強そうに思えたからだ。
成功報酬は八百ルノ。バレット・マンドラゴラを三体、丸のまま冒険者ギルドに持って来て納品すれば依頼達成だ。
俺には圧縮魔法があるから、ダンジョンから持ち帰る時は小さくして鞄に詰めてくればいいだろう。
ダンジョンか……一体どんな場所なんだろうな。
心躍る気持ちと不安な気持ちが入り混じった複雑な気持ちを抱きながら、俺は受注書をカウンターに持って行った。
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