第31話 本当の愛?

 プロムパーティを終え、翌朝クタクタになって家へ帰宅した。親父は仕事で留守だが、康代がひとり自宅でまったりしていた。


「あら、ロバート。顔が真っ赤よ。朝帰りでプロムパーティを楽しんだから、一睡もしてないんでしょ。スムージーを作ってあるからそれを飲んだらゆっくり休むことね」


「ああ、そうするよ」


 部屋着に着替え冷蔵庫の中からスムージーを取り出して喉元に流し込む。そんなとき、横から康代の手が俺のおでこにすっと伸びて来た。


「あら、やだ。ロバート熱があるみたいよ」


 康代は、すぐに体温計を探し出し、俺の口元にぶち込んだ。体温計は103℉をさし、39度を超えていた。どうりでフラフラすると思ったわけだ。康代は、すぐにベッドで横になるようにと指示をする。


 俺はなんとか自力で部屋までたどり着き、ベッドの上に倒れこむように横になる。熱があると気付くまでは普通に歩けたのに、熱があるとわかった途端に辛くなるのだから不思議だ。


 ウトウトとしながらまどろんでいると、康代が氷枕と熱さましの薬を持って部屋に入って来た。

 「さぁ、これを飲んで……」


 俺は、言われるままに薬を飲んでそのまま眠りについた。





 目を覚ましたのは、夜の11時を回った頃だった。朝からずっと寝込んでしまったようだ。ふと見ると、康代が横でスヤスヤと寝ている。



「嘘だろう!! こんなことがあるのか? 」


 俺が驚いていると康代が目を覚ました。


「ロバートの様子を見に来たら、お母さん、行かないでって、私の手を繋いできたの。寝言だとはわかってたけど、熱のあるあなたの手を解くこともできずに一緒に横になっちゃったわ。ロバート、あなた……子供みたいで可愛かったわよ」


 スーッとまた俺のおでこに手を伸ばした康代が笑いながら


「もう、熱も下がったわ。じゃ、私は行くわね」


 





 俺はとっさに……


 立ち去ろうとしている康代の腕を引いた。

 

「待てよ、康代。行くな!」



 俺は、康代を力一杯引きよせ、ベッドの上に押し戻した。康代は驚いた顔をしたが、冷静を装っていた。


「ロバート、冗談が過ぎるわよ」




「冗談なんか言ってないぜ。お前を抱きたい! 」



 俺は、真剣だった。


 優しく看病してくれたからじゃない。ローラと寝ても子猫と寝ても、何かが違うんだ。きっとお前へのこの感情こそが本当の愛だ。


 お前がこの家に来た理由は親父だと知っている。それでも、一緒に住めることが嬉しかった。俺が他の女と寝るのは、叶えられないお前への想いからだったのかもしれない。親父を裏切ってでも……俺は、お前が欲しい。


 感情も欲情も……気づいてしまった俺のこの思いを止められる術など、もうどこにもなかった!



 覆い被さり、抵抗する康代に無理やりくちづける。その柔らかい唇に舌を押し込み、やさしくついばむと康代はスーッと抵抗を諦め俺を受け入れた。水音だけが響く俺の部屋に、熱気と情熱が満たされていった。


 俺は、長い、長い濃厚でしびれるような甘いくちづけを康代に与えた。本当は、すぐにでも服を脱がし、愛をぶち込みたかったが、ガキだと思われるのが嫌で時間をかけ満足させたかったんだ。


 うるうるした目の康代の唇から耳元へ甘いキスを移動させると……康代はとろけるように喘ぎ始めた。


「康代、愛してるぜ。誰にも負けないほどお前を愛してる!! お前は、俺の女だ。誰にも渡したくない」


「あっ、うぅん。ロバート……」


 俺は、康代に愛をささやきながら耳にしゃぶりついた。


 喘ぎながら俺の名前を呼ぶお前のセクシーさに俺は酔い始めてた。俺の手は、ブラウスの上からお前の胸を激しく揉んでいる。柔らかな胸に触ると、もう我慢できなかった。少し荒々しく胸元のブラウスのボタンをはずしはじめる……








 その時だ。


 康代の右膝が俺の股間にストライクをぶちかましたんだ。


「ううっ。痛って〜!! 何してるんだよ」


 俺は、痛みに耐えながらうずくまるしかなかった。康代はスッと俺の元から逃げて立ち上がった。


「ロバート、あなたの気持ちはわかったわ。でも、あなたまだ18で、自分でお金を稼ぐこともできないガキでしょう。私が欲しければ自分の力で生活できるようになることね」




 確かに、康代の言う通りだ。今、俺と関係を結んでも俺は何もできない。愛とか、恋とかに溺れるだけで、二人で自滅の道へと落ちて行くだけだ。その現実と急所を蹴られた痛さで……俺の心も股間もシュンと萎んでいった。



「……俺が自立したら真剣に考えてくれるのか? 」




 康代は、俺の問いかけには何も答えず……ちょっと寂しそうな微笑みを投げかけて足早に部屋から駆け出して行った。





 バタン……。


 ドアの閉まる音だけがやけに響いてやがるぜ。俺はひとり残され、ベッドで横になったまま、しばらく身動きすら出来なかった。

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