幻想の大地

H54

エピローグ 始まり

 その昔、ヨウハと呼ばれる広大な大陸に二つの種族が暮らしていた。


 一つはジンと呼ばれる種族。その種族は手先が器用で武器の扱いに長け、集団で村を作り生活していた。


 そしてもう一つはロウキと言われる種族で、狩りを得意とし、視覚、嗅覚が優れ、運動能力に関してはジンを圧倒的に上回る種族だった。


 ジンはロウキを恐れ、そしてロウキもまたジンを恐れた。


 当然の如く、両者の間では度々争いが起こった。領地、狩場、水源…、様々な問題によって両者の関係は悪化していった。


 初めは小さな口論だった。ほんの小さな行き違いからの口喧嘩に過ぎなかった。だが、一度綻んだ結び目は時と共に静かに、しかし確実に崩壊へと向かって行った。


 そして1024年、遂にジンとロウキの村間で争いが起こり、両者ともに数名の死傷者がでた。


 恐らくそれがダム決壊の決定的な要因となったのだろう。

 

 廻り始めた歯車を止める術はなく、その影響は瞬く間に大陸中に広まり、種族間の全面戦争が始まった。


 ある者は今までの鬱憤を晴らしに、ある者は復讐に、ある者は戦いを楽しみに、そしてある者は望まぬ戦いに身を投じることとなっていく。

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幻想の大地 H54 @hachihachi

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