3#風船邪魔!!
「?!」
異変に気付いたのは、嘴いっぱいに雛へ与えるミミズをくわえた雌ツバメのフーレだった。
「無いわ!!ここにあった筈の我が子の巣が!」
フーレは、ショッピングセンター周辺を飛び回ってフーレ達の雛のある巣をくまなく探し回った。
「どしたの?フーレちゃん!こんなに慌てて・・・早く雛に・・・」
同じく嘴いっぱいにミミズをくわえた雄ツバメのレッシュが、慌てふためく雌ツバメのフーレに言った。
「巣ならあそこだよ!あ・・・風船が天井に・・・」
「ぎょっ!風船?!」
そうだった。不吉な予感は的中した。
今さっきまで、巣の真下で配っていた風船の1個が子供の手から離れて飛んで、高い天井に張り付いていたのだ。
ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー!!
雛の餌をねだる鳴き声が、その可愛いウサギの絵の赤い風船の後ろから響いていたのだ。
「困ったわ・・・どうしよう・・・」
親ツバメ達は、雛のいる場所を塞ぐ赤い風船の周りをしゅーーーーーーーーーっ・・・しゅーーーーーーーーーっ・・・と、飛び交っていた。
「レッシュさん。」
「なあに?フーレちゃん?」
「今さっき言ったでしょ?雛の身に何があったら、やっつけるって?」
「そんなこと言ったっけ?」
「とぼけないでよ!雄でしょ?私、『嘘つき』は嫌いなんだから何とかしてよ!」
「だって、風船だよ?風船は触れると物凄い音がして破裂するから・・・」
「意気地無しっ!あんた、それでも『雄』?」
「わ・・・解ったよ!や・・・やるよ・・・!!」
雄ツバメのレッシュは、翼でばたつかせてホバリングひてそっと嘴と脚で風船の表面に触れてみた。
ふうわり・・・
「ぎょっ!」
雄ツバメは、目の前で翼の風圧で風船が揺れたとたん、仰天してその場を逃げた。
「全く・・・情けないねえ・・・しょうがないから、あたしが風船退かすわ・・・!!」
雌ツバメのフーレは、風船の側に近寄ると、
つん・・・
と、風船の表面を翼で触れて退かそうとした。
ふうわり・・・
「きゃっ!」
雌ツバメのフーレもまた、揺れた風船にビックリして、ひゅーーーーー・・・とその場から逃げた。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「はあ・・・はあ・・・」
ショッピングセンターの片隅で、緊張の余り荒く呼吸をする2羽のツバメは、恨めしそうにその得体の知れない赤い球体を睨み付けていた。
「困ったわ・・・このままじゃ、可愛い雛が可愛そうだわ・・・!!」
「飢え死にしちゃうよ・・・!!いったい、どうすれば・・・」
雄ツバメのレッシュは、風船の下に垂れ下がってる細い物を見詰めていた。
「・・・」
「どうしたの?レッシュ、風船をじっと見てて・・・」
「フーレちゃん。」
「なあに?レッシュさん。」
「雛は風船から助け出せるよ・・・良いこと考えた!!」
「なあに?良いことって?????」
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