光
ガルガード
かつての愛
彼は海に沈む………愛する人を置いて自分だけが先に逝ったことを後悔しながら………
弟に暗示をかけ自分を殺させた悪魔………深海に沈みながら昔のことや愛した人のことを思い出す………
『陸翔(りくと)』
頭の中で自分の名を呼ぶ声が聞こえる………友や仲間………愛した人が………弟が自分の名を呼んでいる声が聞こえる………
閉じた瞳から溢れ出る少量の涙は海に溶けていく………思い出は色あせずに流れても涙を流す悪魔の未来は訪れない
こうなることは分かっていたことだった
暗示をかけることは罪になる
それを知った上で弟に暗示をかけて自分を殺させた………そうすることでしか世界を救えなかった………
優しいが故に自ら苦しい選択をした彼の耳にあの人の声が聞こえた………
『陸!!!』
その声が聞こえて彼は伏せていた瞳を開ける………遠くから見える誰かが泳いでくる姿………
『玲惟(れい)………?』
泳いで自分の方に来るのは自分が愛し1人にしてしまった愛しい人だった………それを認識した途端止まっていたはずの涙が溢れ腕を伸ばしていた………
『玲惟…』
『陸翔』
陸翔の腕を泳いできた玲惟は力強く掴み抱きしめる………
『1人で逝かせるかよ』
『玲惟』
『苦しかったよな………もうお前を1人だけでは苦しまさせねぇから………今度は俺も一緒だ』
愛しい………愛しい彼に抱きしめられて陸翔は静かに彼を抱きしめ返す………
その海は彼の後悔と心残りで出来ている………それを彼らは知らない………
『一緒に逝こう………陸翔』
『ああ………玲惟とならどこへでも一緒に行くさ………例えその先が地獄だろうと………』
あの日も同じことを言われ頷けなかった………しかし今は頷ける………愛しい彼と共に逝ける喜びを感じながら………
『愛してる………陸翔………』
『俺も愛してるよ………玲惟………』
異種族を愛し異種族に愛された彼らは………
静かに呼吸をすることをやめた
光 ガルガード @Garugard
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