三戸シャルロットはもう居ない

パラダイス農家

第一幕 青春のミス・テイク

第一場 マイメイド・マイライフ

 東長崎に起居するつもりはなかった。故郷の名前がついた場所に暮らすのは、棄ててきた故郷を引きずる田舎者に思えて嫌だった。だけど財布の事情がここ以外の選択肢を許さずに、私は六畳一間のワンルームに縛り付けられてしまった。

 当然、大学デビューは失敗した。キャンパスライフや都会暮らしへの憧れ、故郷を発った時は確かに胸に燃えていた夢や希望や志は、火のついた35ミリフィルムのようにあっという間に燃え尽きた。ニュー・シネマ・パラダイス――あの名画のように誰かを焼き焦がすこともなく、孤独に、ひっそりと。江古田から吹く暴風雨によって。

 そして私は、二年の歳月を無駄にした。


 三戸シャルロットはもう居ない

 第一場 マイメイド・マイライフ


 キセノン映写機プロジェクターの排熱音が薄暗い試写室に響いていた。照明が落とされた試写室よりも暗澹たる思いを抱く監督課二年・内古閑うちこが早苗は、先ほど流されたひどい出来の映像フィルムへの作品批評クリティークを、待ちたくないのに待っていた。

「これで全部だよね、築島つきしまちゃん」

「はい。内古閑さんの映像で最後です」

「じゃ電気点けて」

 初老の教授の指示で試写室は明転した。蛍光灯のまばゆい光に包まれて、このまま意識がホワイトアウトすればよいのにと願っても、映画のようにはいかない。これは現実だ。

「いやあ、安定のだったね」

 開口一番、教師は冗談めかして言った。それが呼び水になってか、他のゼミ生達もくすくすと笑い出す。早苗は、こみ上げてくるものを必死に抑えつけて笑顔を作った。いま嘲笑の的になっている映像を撮ったのは自分ではないとでもいうように。


 扶桑ふそう大学芸術学部・映像学科。江古田駅に隣接するこの場所は、日本映画界に数多の才能を輩出する、映画の国内最高学府。映画人になることを夢見る若者を鍛え、育み、遙かなスターダムへ飛び立たせる滑走路――と、入学案内のパンフレットには書いてあった。

 だがもちろん、すべての人間が才能という名のエンジンをフル回転させて、空へ飛び立てる訳ではない。


「講評に移る前に討論しよう。さっきの内古閑さんの映像について」

 教授の鶴の一声で、早苗の公開処刑が始まった。


 ――内古閑早苗、監督作品『青春のミステイク』。

 孫に連れられてとある公園を訪れた老女が、朽ち果てた巨木を目にする。実はその巨木は半世紀前、彼女が当時の想い人と逢瀬を重ねた思い出の目印だった。だが、時代は自由恋愛を許さない。彼女が逢瀬の相手と結ばれることはなく、親の決めた人との結婚、出産。仕事一筋で家庭を顧みない夫との不和、DV、不倫、借金苦、子供の非行、そして夫との死別。そんな波瀾万丈な生涯。回想を終えた頃に役所の人間が到着し、巨木は撤去される。老女は恋の終わりを悟り、涙を流すという物語。尺は十二分。ロケ地は所沢。


 監督課の学生のひとり、ゼミ内では映画通で通っている男子生徒が口火を切った。

「正直言って、何がやりたいのか分かりませんでした」

 監督課の学生達にとっては、あまりに聞き慣れた批評だった。

 。この常套句は、世の映画人――もっといえば創作者すべてをたやすく殺せる毒薬だ。たった一言で、文字通り寝食を惜しんで編み上げた作品と費やした時間、そこに至る努力を壊死させる。

「今の、どう思う? 内古閑

 作品合評公開処刑の司会を買って出た教授は、あえて監督の部分にアクセントを置いて発言した。発言の意図は図るまでもない。お前には才能がないと、そう遠回しに言われている。

「やりたいことは……主人公の波瀾万丈の生涯で……」

 唇の震えを必死で抑えつけて、早苗は作品のテーマをプレゼンした。本来は、言わなきゃ分からないテーマの作品を創った時点で負けなのだ。だが、敗者の弁は他の学生に割り込まれてしまう。

「主役がメリル・ストリープだったら成立するんじゃない?」

 教授と学生達はドッと笑った。

「もしくはジュディ・デンチとかね」

「いや、吉永小百合でしょ」

「吉永小百合がこんな映画に出るかよ」

「それな~!」

 作品とは関係のない部分で盛り上がる学生達の雰囲気に合わせて、早苗は曖昧な笑顔を浮かべた。なるべくその場に馴染むことで、自分は敵じゃないと思わせたかった。鈍器のように重く、弾丸のように速く、ライトセイバーのように切れ味鋭い誹謗中傷クリティークの滅多打ちを浴びたくなかったのだ。

 だが、バッシングの十字砲火は終わらない。

「ところで、どの辺が『青春のミステイク』なの?」

「それ思った。別にミステイクじゃなくね?」

「浅いよね、ネーミングって大切なのに」

 討論が熱を帯びるに従って、早苗の心は冷えていく。批判の刃が、早苗の傷だらけの心をめった刺しにする。

「だいたいさ、回想シーンがクド過ぎだよ」

「正直、盛り過ぎでリアリティないから冷めるよな」

「シーンも適当に摘まんできただけでしょ、オリジナリティ皆無」

「映像って人間性出るからな~」

 批評の矛先は、作品から早苗自身へと向かっていた。人格否定など早苗にとってはいつもの王道ベタ展開だ。「浅い」「つまらない」「技術不足」「個性がない」「センスがない」。そんな言葉は聞き飽きていたが、慣れるものではなかった。むしろ、浴びせられるたびに心の奥底に積もりに積もって、反抗することもできなくなる。

「まあ、それくらいにして。築島ちゃんとオダハナ先生はどう?」

 教授は議論に加わらなかった二人の生徒を名指しして、意見を求めた。

「あ……私は内古閑さんの映像、好きですよ?」

 上映用のノートPCを弄っている女子学生、築島恵那は曖昧な笑顔で答える。途端に、他のゼミ生から鋭い質問が飛んだ。

「これのどこがよかったの、築島さん?」

「どこと言われても……。……雰囲気とか?」

 ゼミ生達は聞くに値しない感想だとでも言うように鼻で笑う。その様子を見ていたもう一人の女子生徒――織田華オダハナは呵々と豪快に笑う。そして――


「あっははは! クッソくだらねえ! ゲロみてえ!」

 最大級の侮辱を叩きつけて、織田華は足早に試写室を出て行った。教授もゼミ生も、誰も彼女を止めようとしない。徹底的に叩かれた早苗ですらも、彼女の言葉に異を唱えようなどとは思えなかった。

 静まり返った試写室で、初老の教授はヘラヘラ笑ったまま合評を総括した。

「内古閑さん、創りたいものを創ってるかい?」

「はい」

 こみ上げてくるものを抑えつけて発音できたのは、たった二文字だけだった。絶対に零してなるものかと目を見開き、誰にも悟られないように拳を握りしめる。

「なら、批評を真摯に受け止めて次に活かした方がいいね。それと――」

 教授は腕時計を確認して、試写室の座席に置いた荷物を片付け始めた。それを合図に、ゼミ生達も身の回りを片付け始める。

 ようやく、公開処刑が終わる。その場から逃げるように荷物を片付けていた早苗に、教授は一言付け加えた。

「若い時からこんな作品ばかり創ってたら後々困るよ。もっと個性出して。じゃ、解散」

 教授や他のゼミ生達が去ってから、早苗はゆっくり立ち上がった。

 三十席程度の試写室には誰も居ない。完全防音のこの部屋の中なら、もう声を殺す必要もない。

 だけど、どんなに批評が渦巻いて、いかに人格を攻撃されようとも、ここは劇場だ。劇場では感動以外の涙を流したくない。

「分かんないよ、個性の出し方なんて……」

 堪えきれず一言だけ漏らして、早苗は試写室を後にした。どんなに憂鬱でどんなに泣きたくても、シフトは早苗を待ってくれない。リュックサックの底に沈んだスマホが、アルバイトの時間をリマインドすべく、「ここに居るよ」と雄弁に震えていた。


 *


 中古のママチャリをバックヤードに停めて、タイムカードに打刻。ロッカーで制服に着替えて、酒精と煙草の煙立ちこめるホールへ飛び出した。

 十八時。夕焼けが空にオレンジから青、そして黒へと変わるグラデーションを描くように、ビジネス街・池袋もその様相を歓楽街へと変えていく。それはまさにマジックアワーだ。

 池袋駅近くの居酒屋のホールスタッフ。それが早苗のバイト先。

「内古閑さん、5番テーブルお願い」

「はい!」

 厨房から出てきた生中ジョッキを片手に、もう片方で特製から揚げを持って狭い店内を急ぐ。

「お待たせしました、生ビールと特製から揚げです!」

 5番テーブルの女性客二人組は、ジョッキを受け取るや否やその場で一気飲みする。思わず電子伝票で5番テーブルが飲み放題プランかどうか確認した。通常料金だ。

「あーし注文いいッスか?」

「おー、適当に頼んで。あたし生もう一杯」

 急いで復唱し、電子伝票に打ち込む。一言も聞き漏らすまいと、周囲の雑音を切り捨てて二人の会話に意識を集中する。仮に聞こえなかったとしても、メニューをめくる後輩っぽい女性の唇の動きを読めば、オーダーは自然と分かるものだ。

「じゃあパクチーサラダと……」

「お前あんなモン喰うのかよ? ゴミだぞアレ」

「えー美味いじゃないスか。ダメなんスか?」

「メニュー貸せ、あたしが注文すっから」

「嫌ッス! 今日は結衣パイセンのオゴリだから好きなモン頼むッス」

「ああ!? あたしのオゴリなんだからあたしの好きなモン喰わせろ!」

 面倒臭い客だと早苗は直感した。メニューを奪い合う女性客を見守りながら、営業スマイルを張り付けて二人のどうでもいいやりとりを眺める。

「店員さん、パクチーサラダ!」

「それパクチー抜きで!」

「ただのサラダじゃないスか!」

「うっせー! 焼き鳥盛り合わせ、塩で!」

「それ塩じゃなくてタレで!」

「お前バカか! 焼き鳥は塩だろ!?」

「パクチー抜きなんだし譲歩してくださいッス!」

「いやだね! パクチーも塩も譲らん!」

「じゃあ和牛ステーキ!」

「バッカ、高いだろ! セロリでも食ってろ!」

「セロリ嫌いッス!」

「好き嫌い言うな! に謝れ!」

 いい加減に決めて欲しい。ボンヤリしている時間が長ければ長いほど、余計なことを思い出してしまう。蘇るのは合評の光景だ。バイトに励んでいる間は抑え込んでいられるのに、少しでも暇ができると嫌な記憶は脳裏に染み出してくる。

「――員さん、店員さん!」

 呼ばれていたことに気づいて、早苗は顔を上げた。怪訝そうな顔で見つめる女性客に笑顔を取り繕って、オーダーを取る。

「パクチーじゃなくてポテサラ。焼き鳥盛り合わせは塩とタレで二人前。あと――」

「冷酒! この……なんかお祭りっぽい名前のヤツ!」

獺祭だっさいな。それと飲み放題追加で」

「獺祭は飲み放題できないんですが、よろしいですか?」

「はいダメ~。貧乏人はハイボールでも飲んでてくださ~い!」

「もういいッスよハイボールで! 店員さん、特製から揚げ追加で!」

 オーダーさえ通せば5番テーブルに用はない。注文を復唱して逃げるように5番テーブルを立ち去った。ロクな客じゃない。なるべく関わらないで済むように店内を忙しなく動き回っていると、悲鳴が上がった。

 人間というものは、関わりたくないと思った途端、関わってしまうらしい。


「内古閑さん、5番テーブル清掃頼める?」

「バラシじゃなくてですか?」

 厨房の奥で大汗をかいている店長から渡された道具で、何が起こったのか悟った。気が重いが、迅速に清掃しないと客単価とレビューサイトの点数が下がってしまう。

 重い足取りで5番テーブルに赴くと、案の定、地獄のような光景が広がっていた。


「うえ……おええ……」

 酔い潰れた生意気な後輩っぽい女性が、見事に飲食物をしている。おまけに連れの女性はその様子を見ながら大爆笑している。こちらも相当出来上がっているらしい。なかなかの地獄絵図だ。

「失礼します」

 手袋を付けて、テーブルの上の食器を下げる。逆再生しそうな女性を別のスタッフに9番テーブル――トイレの符牒――まで誘導させて、おしぼりと雑巾で手早く片付けて、除菌スプレーでなかったことにした。

「いやあ、ゴメンねえ店員さん!」

「いえ、お気になさらず……」

 だが、地獄は続いてしまう。逆再生の怖いところは二次災害だ。喩えるならばそれはゾンビ映画。ひとたびゾンビが発生すると、付近に居た者はすべからくゾンビ化する。それは、5番テーブルに残っていた女性も例外ではない。

「あの神崎ってヤツがさあ――うおえッ」

「え……」


 それはまるで噴火だった。

 紀元79年、ポンペイ。兆候を見せることなく一気に噴き出したヴェスヴィオ火山の噴煙と溶岩流が天も地も分け隔てなく覆い尽くしたのと同じように、頭から一張羅の制服、さらにはその下に身につけた下着まで余すところなく、早苗は生ぬるいドロドロした溶岩に焼き尽くされたのだった。

 死因、もらいゲロ。


 *


「内古閑さん、今日はもう帰っていいよ。シフト上は最後まで居たことにしとくからさ……」

 店長の優しさに「はい」という二文字しか返せず、早苗は少し早めの帰路についた。心は合評で叩かれたことで引き裂かれていた。体を包むようにひどい匂いがした。汚れた下着を入れたビニール袋は、捨ててしまいたかった。おまけに駐輪場に停めた中古のママチャリのサドルは盗まれていた。

 電車に乗るのも躊躇われて、池袋から東長崎へ歩く早苗は独りごちる。

「ここまでひどい目に遭わせなくてもいいじゃん……」


 もしこの世界が映画で自分が監督ならば、ここまでの不運を主人公に与えたりはしない。もっと華やかで煌びやかな物語にしたはずだ。

 たとえば、内古閑早苗は学生にも関わらずその名を轟かせる鬼才で、オファーがひっきりなしにやってくる。世界に名だたる役者達がサナエ・ウチコガ作品への出演を熱望し、スピルバーグやキャメロンとレッドカーペットに並び立ち、ウォーク・オブ・フェームに名前を刻み、ドルビー・シアターでオスカーを総なめにする。そしてスピーチで告げるのだ、「私は映画が大好き」と。オーディエンスの万雷の拍手の中、お辞儀をしてカメラをパンアップ。そして、エンドロールが流れる。

 そこまで考えて、早苗はふいに気づいた。

「ああ、そういうことだったんだ……」


 冷静になると、自分の作品の粗が見えてくる。映画監督も脚本家も、もっと言えば漫画家、小説家達は誰しも、駄作を創ろうと思ってメガホンや筆を執っているわけではない。ただ熱中し過ぎてということをすっかり忘れてしまうのだ。

 ――内古閑早苗監督作品、『青春のミステイク』。

 合評で散々に叩かれたあの作品の主人公には「クドいくらいに」不幸が降りかかっている。その上、主人公の老女に救いはなく、カタルシスは彼女の中で完結していて一切描かれていない。ハッピーエンドにせよバッドエンドにせよ盛り上がりも爽快感も悲愴感もない。誰がそんな話を喜ぶというのだろう。


「そんなことも分からないんだな、あたし……」

 フタをしていた思いが一気呵成に飛び出して、早苗の心をあっという間に覆い尽くした。映画監督になりたいだなんて身の丈に合わない夢を性懲りもなく追い続けて二年も経つのに、自分に才能がないことさえ気づけない。呆れを通り越して、笑えてくる。笑っていると涙が出てきた。

「うまくなりたい……のに……」

 抑えることはできなかった。今まで抑えていた分、大量の涙が滝のように流れ落ちる。声を殺そうにも、しゃっくり混じりの嗚咽はどうしようもない。早苗の歩く夜道が、街灯も人もまばらだったのが唯一の救いだった。

「くやしい……くやしいよ……」

 早苗は、才能がない自分の無力さに泣いた。愛着のある作品を正当に評価して欲しかった。決して、心血を注いだ作品を、何がやりたいか分からないだの、浅いだの、クドいだのと言わせたくなかった。

 ましてや、ゲロみたいだなんて――。


「泣いているんですか?」


 不意に背後から聞こえた声にどきりとした。吐瀉物の匂いも気にせず、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を拭う。

「……大丈夫です」

 背後に居る誰かに一言だけ呟いて、早苗は足早に歩き出す。泣いているところを見られたくないし、近づくと臭いのだ。それに、吐瀉物のような作品を創る才能のない女なんかを相手にしないで欲しい。

「あの、だったら助けてほしいんです」

 今日は厄日だと思った。作品を叩かれゲロを掛けられ、おまけに意味不明な厄介事に巻き込まれそうになっている。この展開を作っているのが運命や神様だというのなら、そいつらは最悪の映画監督だ。そんなプロットは、こちらから願い下げる。

「……じゃあ、大丈夫じゃありません。あたしはつらくて、悲しくて泣いてます。おまけにバイト先でゲロまみれになって臭いですし、下着も着けてない変態です。近寄らない方がいいと思います」

「そうですか……」

 背後の声は納得したように息を吐いて――

「だったら、あなたをください」

 あまりにも意味が分からなかった。見ず知らずの人間だと言うのに、殺意すら湧いてくる。それを覆い隠すだけの心の余裕すら今の早苗にはなかった。

「関わりたくないって言ってんのが――」

 振り向いた早苗は、眼前に居た人間の姿を見て固まった。文字通り、目を離すことができなかった。


 安アパートの建ち並ぶ住宅街のゴミ捨て場。誘蛾灯が照らす仄明かりの下に彼女は居た。廃棄される予定の段ボール箱の中に、お行儀良く座っている。わずかな照明の明かりをまばゆいばかりに反射するストロベリーブロンドのロングヘア、触れただけで溶けてしまいそうな新雪のような柔肌。もう少し離れて居たら、ビスクドールが喋り掛けてきているのかと勘違いしてしまっていただろう。


「大丈夫です。私があなたを助けますから」

 彼女はそう告げて、箱の中から姿を現した。背丈はそこまで高くない。西洋人らしい顔立ちを勘案しても、少女と呼べる年齢だろう。ただひとつ違和感があるとすれば、彼女の着ている衣装だった。

「あんた、メイド……なの……?」

 少女が着ていたのは、クラシカルなモノトーンのメイド服だった。挨拶がてらということだろう、裾を恭しく持ち上げてカーテシーをしてみせる。彼女の姿も相まって、その仕草がとても見えた。

「そのようです。あなたを助けさせてくださいますか? お姉様」


 早苗はその日、メイドを拾った。

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