異世界勇者の失踪

MrR

失踪前の勇者

 シルヴァニア王国のリネット王女はこの世界「アルテミアス」に召喚された、異世界から呼び出されし勇者の事を思い出す。


 黒髪の優しそうな、変わった顔つき以外はとても平凡そうな勇者。

 

 実際、この世界に召喚された剣を握ったどころか暴力も振るった事もないぐらいに平和な世界に生きて来たらしい。


「全く、あの勇者は使い物になるのですか?」


「外見も今一だしね・・・・・・」


「やはり勇者召喚の伝説は間違いだったのでは」


 当時のリネットは侍女達からそんな言葉をよく耳にした。

 私は当時何も思わなかった。

 それから暫く立った後、勇者は魔王討伐の度に出た。

 選抜されたメンバーは一流の戦士達で固められたと聞いている。


 そうして戦果を挙げていき、魔王軍の強力なモンスターを撃退していく。

 この王都にも活躍が届く程の勢いだった。


 魔王撃退も間近に迫り、早くも魔王との戦いの後をどうするかが話合われたぐらいだった。 


 だがある時、勇者が失踪した。


 皆が皆、臆病風に吹かれて逃げていったと言い、新たな勇者が抜擢された。

 その勇者はグリシア・モルレード。

 金髪の美男子で公爵家の産まれ。

 リネット王女の婚約者でもある。

 

 前の勇者に負けないぐらいに強力な武具が与えられ、勇者のパーティーに合流した。


 そこから悲劇的な勢いで勇者パーティーは敗北を重ねていく。


 誰もが驚き、そしてグリシアや勇者パーティーに失望した。


 やがて勇者パーティーも散り散りになっていき、グリシアは急病のために家に引き籠もっているそうだが皆本当は嘘だと気付いている。噂では一日中酒や賭博、女遊びにかまけているそうだ。


 そうした事態の中、魔王軍は勢いを増していく。


 新たな勇者を召喚しようと言う動きがあったが、召喚魔法は時間が掛かる。


 少なくとも再度使用出来る頃には魔王軍に滅ぼされているだろう。


 この状況を打破するためにリネットはある決断をした。


 お供を引き連れて旅に出て、失踪した勇者を見つけ出すと言う物だった。

 

 しかし旅の先に待ち受けていたのは残酷な真実が待ち受けているとも知らずに。

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