第162話 村の中へ

 今日はシアンさんとミザリーさんとマルゼダさんが居残りで、

ジョンとバーントさんとヴィラックが森へ出向き、


「この村は信仰の関係もあるのだけど、

村の人がハニカ村へ行き来する他は、

この村と その周辺だけで生活しているの。」


 おれとアルテナは、ロスティさんに村の中を案内されていた。



 体調を崩して、久しぶりにベッドで寝込む日々が続いたけど、

それも回復して、おれも みんなも一安心していた。


 以前はミザリーさんが付きっきりで看病してくれて、

今回は みんなが交代しながら看病してくれた。


 ただ、おれが寝込んでいる間、

マルゼダさんは何をしていたのかは わからないし、

ヴィラックに看病されるのは正直不安だったから、

二人は看病をせずに別行動をしていたんだけどね。



 借りている家の居間で、

みんなと一緒に机を囲んだ おれは、

シアンさんの作ってくれた 煮崩れさせた野菜のスープと

豆粒のようになるまで細かく切った肉を焼いたものと、

固めのパンを果実酒で浸して柔らかくしたものを食べて、


 今日はどうしようかと考えたところで、

おれは すこし不安な気持ちになった。


 村の人達に この黒い髪を見られて、

ロスティさんは受け入れてくれたけど、

他の人達は、必ずしも受け入れてくれるわけじゃないから……



 そんな おれの不安を察してくれたのか、


「依頼終了の期間が何時頃までだったか、聞いてこようか。」


 マルゼダさんが村長のところへ わざわざ行ってくれて、


「元々長居をするつもりもなかったんだ。」

「ソーマは ここに居てくれれば良い。」


 ジョンもバーントさんも そう言ってくれた。


 寝込んでいる間は、外に出ることを考えなくて済んだから、

退屈ではあるけど――



 ―― コンコンッ


 この借りている家のドアを誰かがノックした音が響き、


「あの、よろしければ、村の中を案内したいと思います。」


 シアンさんに出迎えられ居間にやってきて、

早々に提案してきたのが ロスティさんだった。





 カラパスの村の規模は、最近になるほど広がっていった。

村の外と中を区切る木のさくの囲いを広げていくほどに、

村の規模が広がっていくからだった。


 ある程度まで広がっていけば、木の柵ではなく、

木や石の壁へと建て替えてしまい、村は街と呼ばれるようになる。


 ハニカ村からチカバの街へ進む道から外れた位置にある

カラパスの村は、ハニカ村へと行き来する他は全て

自給自足で村の生活は成り立っている。


 村の中は基本的に個人の家々が建ち並び、

教会や寄合所などが建っている他、馬や牛や羊を数匹飼う小屋や

村の外に近いところには集合墓地があった。


 ロスティがソーマ達を村のあちこちに案内しているのは、


「村に来ていただいてるのですから、

村の良さも知っていただきたいと思いますから。」


 と、ロスティはソーマとアルテナに語っていた。


(みんなが少しでも、彼のことを受け入れられるように―― )


 という善意の気持ちもあってロスティは、

ソーマ達と親しくしている様子を村人たちに見せつけるように

二人を客人として村の中を案内していた。

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