第144話 カラパスの村
森の中に入るのを避けるために右か左かで右を選んだ結果、
どうやら違ったみたいだったんだけど、
おれ達の進行方向には運の良いことに、村があった。
で、その村に近づいたおれ達に、
「止まれ、そこの怪しい奴ら。」
村の門番たちが立ちふさがった。
おれは髪を隠すためにフード被ってるし、
ジョンもミザリーさんも目や耳を隠すために
同じフード付きのローブを羽織っている。
シアンさんやバーントさん、ヴィラック、
マルゼダさんたちはもうローブは荷物の中に片付けているが、
アルテナは普段通りのビキニアーマー姿。
……
「なに、この村は旅人や冒険者は通さないの? 」
「そうだ。村人以外の者は通さない。」
アルテナが門番の人に話を聞いているけど、
閉鎖的な村もあるんだなぁ……
まぁ、そもそも田舎とか村って、
都会みたいに人の出入りも少ないし、
魔物とか賊みたいなのもいるから余計に、かな……?
それにしても……門番の人達、
アルテナのことをジロジロ見過ぎじゃないか?
いくらアルテナの恰好が恰好だからって――
「村の近くに魔物が出てきたら――」
「―― 引き返すか森の中を進むか、どっちかでいいよ。」
そう思ったら なんだかムカッときたから、
アルテナの言葉を
「ソーマ……」
「別に この村じゃなきゃダメってわけでもないんだからさ。」
なんだか目を丸くして驚いた様子のアルテナに、
おれは続けて言葉を投げかけていた――
*
カラドナ大陸の北西にある小さな村『カラパス』
村の北には山々が、南から西にかけてに森林があり、
チカバの街とハニカ村とを行き来する者達は
立ち寄ることのない外れた辺境の村。
山の低地に牛や馬、山羊などが生息し、
その低地から離れたところには川もある。
南から西の森林には木の実や、
水分を豊富に含んだ果実が成っているため、
肉や水、飲み水などを交易に頼ることがなく、
村での自給自足ができていた。
カラパスの村の閉鎖的な理由は、それだけではなく――
*
―― ん?
アルテナをジロジロ見ていた門番の一人が、
突然血相を変えて、村の中へ走っていっていた。
「どうしたの? 」
「えっ!? あ、い、いえっ、なんでもないです!? 」
「? 」
急に態度や対応が変わって、
アルテナもおれ達も内心、首を傾げていた。
「村に入らせてもらえないのか、どうなの? 」
「そ、それは……」
それになんだか、アルテナに対して弱腰になってる……?
村の門番たちが門前払いし続けるなら、
腹が立つけど、村に入らず通り過ぎれば良いんだけど、
急に、変に押し留めるようになったものだから、
おれ達はどうすれば良いのかわからないんだよね……
待たされるのは待たされるので苛立つんだけど、
村の入り口の方から複数の人がやってきて、
「ど、どうします……? 」
さっき村に走っていった門番が戻ってきて、
「えぇ、みなさんはどういった要件で、この村に来られたのですか? 」
先頭に立ったお爺さん―― 村長さんかな? が、話しかけてきた。
「実は―― 」
アルテナが村長っぽいお爺さんに事情を説明している間、
おれは なんとなく村人たちを見ていて、
血の気の多そうな男の人やおれたちを警戒してそうな人達の中で、
一人だけ白いコートを羽織った女性に、おれは目を引かれていた。
白いコートと薄い水色の髪に、
利発さと活発さを持った同色の目をした女性。
彼女は金のネックレスと金で装飾された杖を持って、おれ達を見ていた。
あれ? この村人たち――
「ソーマ、行きましょう。」
「え? 」
「話を聞いてなかったんですか? 村に滞在しても良いんですって。」
アルテナに声を掛けられて驚いていたら、
シアンさんが説明してくれた。
「この村の、近隣の安全確保の依頼を受けたんだ。」
「
バーントさんとマルゼダさんが補足説明して、
おれは事情を飲み込むことができた。
急に態度を変えてきたのは、
ハニカ村のことを聞いていたからだったのか……
そう思いながら村の中へ入って行く時に、
「……」
ヴィラックが不機嫌そうな顔をしていた。
まぁ、おれもちょっとイラっとしてたけどさ……
こちらをチラチラ、ジロっと盗み見ている村人たちの視線に
不愉快な物を感じながら、
また白いコートの女性の視線を受けながら、
おれ達は権力者っぽいお爺さんの後をついていっていた。
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