第145話 少年バルトの衝撃

 チカバの街へ行こうとしてた おれ達は、

道を間違えたらしいんだけど、その先に村があって、

いざ行ってみたら、門前払いをされそうになった。


 水や食料に余裕があるから村を通り過ぎても良かったんだけど、

なぜか向こうの態度が急に変わって、

村周辺の安全確保の依頼をこなすことで、数日間の、

村の滞在を許可されることになった。


 ハニカ村での出来事が耳に入っているらしく、

村人たちの視線に嫌な感じがしつつも、

おれ達は代表者の爺さんの後から村へ入っていく。


 あと、なんかヴィラックが不機嫌そうだった。


 ヴィラックも、村の連中に不信感抱いたのかな?





(今日はヨートルさんに、狩りに連れてってもらえるかなー? )


 ソーマ達の辿りついたカラパス村、

青髪の少年バルトは、ヨートルを探して村の中を歩いていた。


「よぉバルト、今日もヨートルのところへ行くのか? 」

「あぁ。おれだって、そろそろ狩りに行きたいからね。」

「ははっ、まぁ応援してるよ。」

「ありがと。」


 その途中で知り合いのおじさんに声を掛けられながらも

バルトはヨートルの家へと向かい――


「……いない? 」


 家を留守にしていることに首を傾げていた。



 狩りは村の近辺で行われ、

獲物の獲れる獲れないに関わらず村に戻る。


 それがカラパス村での狩りをする者達の行動で、

バルトはヨートルと知り合って以降、連日 ヨートルの家へ行き、

彼の行動を把握しているつもりだった。―― が、

バルトが家に到着するまでに出かけているのはまれであった。


(もう狩りに出かけた!? )


 そう思ったバルトが村の南側の入り口へ急ぎ――



(何あの集団!? )


 ―― 建物の陰から、彼らソーマ達を目撃したのであった。



 バルトがまず目についたのは、


(えっ!? 裸っ!? 恥ずかしくないのっ!? )


 大事なところしか隠れてない恰好のアルテナであり、


(うわ、でっけぇ……でっけぇ……)


 ソーマ達の中で一番背の高いバーントと、

鎧をしていてもわかる胸の大きさを持つシアンであり、


(こいつら、村の外から来た冒険者ってやつか!? ……)


 荷車を押しているヴィラックや、朱色の髪のマルゼダ、

フードで頭を隠しているミザリーやジョンに目が行き、


(なんか、おれと同じかそれより ちっせぇ奴がいるな……)


 ヴィラックと並んで荷車を押している、

フードを被ったソーマにバルトは注目していた。


(あんなちっさいのでも、冒険者をやって旅をしてるのか……)


 ということを、彼は考えていたのであった。



 バルトはカラパス村で生まれてから十四年目を迎えた。

体つきもグングン大きくなっていく年頃で、

彼は大きな獲物を狩って帰ってくる大人たちに憧れを抱いていた。


 その彼が、大人たちの中で強く憧れを抱いているのがヨートルで、

彼は大人たちの中では若く、大きく、優しげに笑みを浮かべているが、

狩りとなると一番大きな獲物をしとめて持ち帰ることが多かった。


 そんなヨートルも、そろそろ村の女性たちの中から妻を迎え、

しばらく狩りに出かけられなくなるだろうというのをバルトは知り、

 それまでに狩りの手ほどきを受けるために、

バルトはヨートルの家へと日々通い続け、

ヨートルに断られて家に帰る日々を繰り返していた。



(外には、魔物とか族とか、悪い奴らがいっぱいいるんだろ……

でも、あいつは冒険者として、外からこの村にやってきた……)


 バルトの視線は、村長の家へと向かうソーマに注がれ続けていた。



(あ、ヨートルいるじゃん。それにロスティ姉ちゃんも。)


 彼らソーマ達の後を追うように歩く青髪の青年と、

白い外套コートを羽織った薄い水色の髪の女性の姿にバルトは気づき、


(……)


 バルトはこっそりと彼らソーマ達の後を追いかけた。

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