第42話 オーガさんと街遊び。。


「ありがとうございましたー。またおコマシくださーい」


「……今度は、あなたがいない時に来ます」


「スケさんは照れ屋ですねー。ツンテレですか、ツンテレなんですねー!!」


「スケじゃないですし、ツンでもテレでもないです」


「あははー、私はツンデレ派なんで、そう簡単にはひっかかりませんよー」


「……それは良かったです」


「キュンッ、クトゥルゲージが上昇しましたー! すかさずツンデレ属性を取り入れてくるとは、さすがスケさんですねー」


「意図してないところで上がっていきそうですね。下げるにはどうしたらいいんでしょうか」


「キュンキュンッ、クトゥルゲージが上昇しましたー!! いつデレが来るのかと思うと、眉唾ものですねー」


「……それを言うなら垂涎ものじゃないですか?」


「キュンキュンキュンッ!! はぁはぁ……、ここでデレを突っ込んできますかー。このままでは、私までスケさんの手付けになってしまいますねー」


「……もう行きますね」


「はーい、またスケコマシくださーい」


「………………」


二人ぶんのお代を払い店を出る。


……向こう半年は来たくないな。食べて溜め込んだエネルギーをその場で消費した気分だ。


店の外では、さらに通りを歩く人が増えているように感じる。


「さぁ、お腹も膨れたし色んな所に行きましょ!!」


「そうですね、適当に歩きましょうか。ちゃんと前を向いて歩いてくださいね」


顔をあっちこっちに向けながら歩くカオウさんに注意しながら、通りに沿って街の見物をしていく。


目に入る全てのものが真新しく新鮮なようで、時折立ち止まっては興味深そうに眺めている。ローブが脱げてしまわないか心配だ。


「ねぇ、あそこの店は何があるの?」


「あぁ、あそこは遊具屋ですね。いろいろな玩具を売っている店です。入ってみましょうか」


「うん!!」


よく勇者さんに付き合わされて来るから、あの店についてはよく知っている。


カオウさんもウズウズして興味津々のようだったので誘ってみたが、元気な返事が返ってきた。彼女に続いて店に入っていく。


「わぁー!! ねぇねぇ、これは何なの?」


「それは簡単にお菓子が作れる玩具ですね。お子さんがいる家なんかは、買っていく人が多いみたいですよ」


「へぇー、これは?」


「それは、魔法が使える気分になれる杖型の玩具です。それを振ると、本当に魔法が出たかのような光がでますよ」


「すごいわねっ!! どう?どう? ファイアーボール!!」


「……俺に向けて振らないでください、眩しいです……」


とても楽しんでいるようで何よりだ。こっちまで楽しくなってくる。


勇者さんと一緒に来たら、二人でいつまでも盛り上がってそうだ。


「ねぇ、これは?」


「……それは、複数人で遊べるカードゲームですね」


彼女が手に持っていたのは、屋敷に誘われた際に四人で遊んだハチャメチャなカードゲームだった。


「楽しそうね!! あんたもやったことあるの?」


「……勇者さんの屋敷にあるので、帰ったら勇者さん達を誘ってみるといいですよ。たぶん、喜ぶと思うんで」


「いいわねっ、頼んでみるわ!!」


勇者さんなら喜んで誘いに乗ることだろう。ズルをしそうになってもヴァンさんかシスターさんがいれば、見抜かれるはずだ。


それからも店内を見回っていると彼女が気になる物を見つけたようで動きを止めた。


「……これは」


「うん? あぁ、それは魔王さんのフィギュアですね。といっても本物を見たことがある人も少ないんで、魔王さんを想像して作られたものですけど。だから、同じ魔王さんでも全く違うフィギュアがいっぱいありますよ」


「へ、へぇー、そ、そうなんだ。これが魔王……」


「どうしました?」


「う、ううん、何でもないわ!! そ、そろそろ次に行きましょ!!」


カオウさんが慌てたように店を出ていった。


彼女の様子がおかしかったけど、遅れるわけにはいかないので俺も彼女に続いて店を出る。


「本当に色んなものがあるわね。全部見て回るには、全然時間が足らなそう……」


「これから屋敷にお世話になるなら、時間なんてたくさんありますよ」


「……そうね、……まだあんたは大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ。最悪、あずさちゃんが帰ってくるまでに戻ればいいですから」


「あずさちゃん?」


「ウチの店で働いている子です。学校終わりに来てもらっているので、まだ余裕はありますよ」


「そう、……それなら、今日は時間一杯付き合ってもらうわよ!!」


その後も、通りにあるお店を転々と見て周り、いつの間にかギルドがある中央広間に辿り着いていた。ここまで来るのに思いのほか時間がかかった。


ご婦人が連れて歩いていたジャラットにカオウさんがじゃれつかれたり、店前に置いてある服を見てピッタリのサイズが見つからないことにガッカリしたり、マッスルな人に『君、いい体してるね』と触られそうになって彼女が反撃しようとするのを阻止したりと、とにかく大変だった。


だが、散々な目に遭ったにも関わらず、次に次にとカオウさんは終始楽しそうにしていた。


「ねぇ、あそこの屋台のやつ食べましょうよ」


「さっき別のやつを食べましたよね?」


「歩いた分だけお腹減るじゃない。お金も後で返すからっ!」


「……はぁ、付けは店でしてほしいんですけどね。一本だけですよ?」


「ふふっ、それじゃ並びましょ!!」


美味しい匂いに誘われたカオウさんと、列を作っているダッカさんお墨付きの串焼き屋台に向かう。


確かに街通りを歩き回ったおかげで腹には余分が出来ている。


財布の中も今日一日で軽くなってしまったけど。


「食欲をそそる匂いね!!」


「目の前に来ると余計に、ですね」


「一本じゃ足りなくない?」


「ダメですよ。食べ過ぎるのは体に……」


「……いい」


「そう、食べ過ぎるのは体にいい…………って、ダッカさん?」


「私もいますわよ」


気が付いたら後ろに、ダッカさんとカカさんが列に並んでいた。


「お二人も串焼きを買いに?」


「……ん」


「今日は冒険者業をお休みにして、お姉さまとお出かけ中なのです」


「……一日十本」


「今日は三本までですよ。てんが言ったとおり、食べ過ぎは体によくありませんわ」


「……そんな」


ダッカさんの食い意地にカカさんが付き合ってあげている感じだろうか。


「てん、そちらの方は貴方のお友達ですか?」


「はい、カオウさんです。街に来たばかりということで案内をしているんです」


「そうなのですか、私は冒険者業をやっているカカと言います。よろしくお願いしますわ」


「……ダッカ、よろ」


「え、ええ、私はカオウよ」


カオウさんとの自己紹介を済ませ、彼女達は女子トークを繰り広げ始めてしまった。


「身長が高いのですね。お姉さまより大きい女性に会うのは久しぶりですわ」


「そ、そう? た、たくさんご飯を食べてるからかも」


「……同士」


「羨ましいですわね。私ももっと背が高ければと、何度も思ったことがありますわ」


「うーん、私はカカみたいに女の子らしい女の子の方がいいと思うけど……」


「……どっちでも」


「お姉さまはもう少し自分の容姿に興味を持つべきですわ。せっかくスタイルも良いのですから、もっとお洒落に気を使っても……」


「……ペコペコ」


「ダッカは花より団子ってやつなのね……」


「はぁ、それでも全く太りはしないのですから不思議ですわ……」


後ろの女子トークを聞き流しつつ、列が進み自分達の番になりそうだったので声を掛けようとすると、中央広間に続く南通りの方から大きな声が聞こえた。



「「────っ、見つけたっ!!」」



声を上げこちらに駆けつけて来たのは、カオウさんを追っていた二人組みの冒険者だった。





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「はーい、またスケコマシくださーい…………ふふっ」

「何笑っているのよ」

「うふふー、からかい甲斐のある人がいるなー、なんてー」

「……店長に怒られるわよ」

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