第22話 勇者さんダンジョンへ。
「ダンジョンですか?」
「うん、一緒に来てくれないか!?」
「……何で俺を?」
朝、勇者さんがまた店に来たと思ったら、珍しくシスターさんのことではなく冒険の誘いのようだ。
でも、何で俺を誘うんだろうな?シスターさんとヴァンさんがいれば別に俺なんか要らないだろう。
まさか、勇者業解散の危機なのか?
「実は、休みの間特にすることもなくて何をしようかと考えていたんだけど、……まぁ、あれだよ、シ、シスターに日ごろの感謝の礼というか、何かプレゼントしようかと思ってね」
「それで、ダンジョンに?」
「あぁ、どうせなら、まだシスターとも行ったことがなかったダンジョンでお宝を見つけてプレゼントしたいんだ」
散々休みを欲しがってたのに、いざ休みをもらうと何もできなくなるとは毒されているというか、順応しているというか。
だけど、勇者さんにしては良い考えじゃないか。シスターさんも喜ぶだろう、何より勇者さんからのプレゼントだしな。
「それで、できればシスターには内緒で行きたくて。ヴァン爺にもう声をかけてあるんだけど、僕は今までダンジョンには入ったこと無かったし、ヴァン爺も同じらしくてね」
「それで俺に?」
「店主も昔はダンジョンとかにも潜っていたことあるって言ってただろう?」
「まぁ、何年も前ですけど……」
あずさちゃんと出会うより前のことだからなぁ。
そんなに昔とダンジョン内のモンスターも変わってないとは思うけど……。うーん、あんまり気が進まない。
……でもなぁ。
「店主、頼むっ!! 力を貸してくれないか!?」
「…………明日ならお店休みなんで大丈夫ですよ」
「おぉ、本当かっ!?ありがとうっ!!」
どうにも勇者さんの頼みに弱いな。でも、今回はシスターさんのためだし、多少なりとも力になってあげようか。
戦闘面ではほとんど役に立てないんだけど。
「それじゃあ、また明日の朝迎えに来るからお店で待っていてくれ!!」
「はい、わかりました」
「本当にありがとうっ!! じゃあ、また明日会おう!!」
そう言うと勇者さんは店を出て行ってしまった。明日の準備に急いで帰ったのか、シスターさんにダンジョンに行くことへの誤魔化しの理由を伝えに行ったのか。
俺も明日の準備をしないといけないな。
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次の日の朝、管理人室で朝ごはんを食べながら、あずさちゃんと大家さんに一応ダンジョンに行くことを伝えておく。
「えっ、今日ダンジョンに行ってくるんですか?」
「うん、勇者さんとヴァンさんと一緒にね」
「……ヴァンさんですか?」
「そっか、あずさちゃんはまだ会ったことなかったっけ。勇者業に新しく魔法使いさんが入ったんだ」
そういえばお店で会ったことはなかったもんな。学校終わる前にヴァンさん来てたし。
「へぇー、そうなんですね。でもシスターさんは一緒じゃないんですか?」
「シスターさんにお宝をプレゼントしたいみたいでね。内緒にしときたいんだって」
「いいですねっ! 珍しく良いこと考えましたねっ!!」
……やっぱり勇者さんの評価が低いな。俺も同じこと思ったけどさ。
俺もこんな評価をもらうことがないよう頑張らないとな。
「…………てん、ダンジョンに行くのか?」
「はい、夕方までには帰ってくると思います」
「……そうか、気をつけてな」
「俺はあまり戦う必要ないと思いますから大丈夫ですよ」
勇者さんもダッカさんやギルドマスターには適わないかもしれないけど、それでも冒険者の中でも強い方だろう。
ヴァンさんはヴァンパイアだし、魔法使いだし。……大丈夫だろう。
ゴブリンと戦ったときにも使った剣と、ポーションやその他の用意だけをして行けば十分だ。
「私にも何かお宝を見つけてきてくれてもいいですよっ!!」
「おう、いってらっしゃい」
「クゥンクゥン!!」
「行ってきます」
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「私も内緒でついて行って……」
「お前はダメだぞ」
「…………はーい」
「クゥーン?」
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