第6話 クラスメイトが親に会うそうです

 授業を終えたリンは家ではなく、王都にある不動産に立ち寄った。

 理由は単純にいちいち町から王都に行くのがめんどくさいからだ。


 因みにリンは特待生なため、授業料は免除されているのでお金にはさほど困ってはいなかった。

 そのあと色々アパートを見て周り、学校から歩いて間もないところにあるアパートに住むことになった。


 アパートに入ったリンは異空間を展開した。

 しかし、いつも練習に使ってる異空間ではなく、様々な物の出し入れが可能な収容用の異空間だ。


 そして家から持ってきた道具を並べ、二時間かけて住むのに十分な環境を整えた。


「疲れたし、シャワー浴びて寝るか」


 気がつけば日が落ちて夜になっていた。


 シャワーを浴びて、着替えてリンはそのままベッドに潜り込んだ。


「今日は何かと充実した気がする」


 呟きながら今日あった出来事を思い返していた。


 王都に入って最初の雑貨屋に立ち寄ったときのあれはいろんな意味で衝撃的だった。

 まさか父さんと母さんかあそこまで有名だとは思わなかったが。

 それと魔法学校は不安は多少あったものの杞憂で終わったし、友達もできたのでそこまで悪くはなかった。


 といっても周りは十歳の子供の集まりだから、前世の記憶があるリンにとっては小さい子を相手にしてるイメージになってしまう。

 精神年齢で見たらロリコンとかショタコンって言われたら否定できなくなるだろうと、今日の出来事を思い返しながら眠りに落ちた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 数日後


「俺のアパート前で待ち合わせって言ってたけど、遅いなぁ……」


 退屈しながら待っていると、


「ごめん、待った?」


 後ろから声をかけられた。


「まあ、少し」

「そこは「今来たことろだよ」とか言うべきじゃないの?」


 ちょっと不満げに頬を膨らませていた。


 彼女の名は『レーナ・ヒストリア』

 赤いロングストレートの艶のある髪が特徴で肌が白くすべすべしている。

 努力家でドジが多い伯爵家のご令嬢である。

 今日は休みなので白いワンピースをと麦わら帽子といった格好である。


(ロリコンじゃないけど、めっちゃかわいい!)


 少し時間が経つと、


「おー! 悪い悪い、遅れたわ!」

「遅い! 男が女より遅いってどうなの?」

「まあ、色々あってさ、そんな事よりまだ揃ってないのか?」


 そして、このスポーツ刈りの黒髪の少年は『ルクス・ヘカトール』

 大規模の商業組合の御曹司である。

 破天荒で無茶が多い。

 いつも事がある毎にレーナと喧嘩している。


「おー来た来た! 殿下!」

 また少ししてロドニ殿下が来た。


「すまない、遅れてしまった。護衛は要らないといったのだが父上が聞かなくてな、こっそり抜けて来て遅れてしまったのだ」


 『ロドニ・レオンハート第二王子』

 クラントブール王国の王子でクラスでは学級委員長をしている。

 見た目は肩まで伸びたキレイな金髪ショートのストレートヘアーでいつも爽やか顔をしている。

 そして喋るときの王家オーラが半端ではない。

 常に冷静沈着、皆に頼られる存在で学年では常にトップである。


(さすが、王家だな。いつも通りオーラがスゴいことで)


「じゃあ、集まったことだしそろそろいくか」


 そして四人は馬車を借りて実家に向かったのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 念願の対面


「着いたよ」


 そう言って後ろを向くとルクスとレーナは目を輝かせてた。


(嬉しそうだなぁ……変なことが起きなきゃ良いけど)


「遂に会えるのね!」

「楽しみだぜ」


 喜びの余り二人はキャッキャッっと浮かれている。


「取り敢えず、家に入るよ?」

「「はーい!」」


(現実を知らない子供はお気楽でいいですね)


 リンは後々のことを考えると、やるせない気持ちになった。


「ただいま」


「ん? お前帰ってきたのか? まさかホームシックにでもなったか?」

「違うわ!」

「じゃあ、どうした? なにか忘れ物でもしたか?」

 

 ハルターは不思議そうにこちらを見てきた。


「そんなんじゃないよ。ただ、クラスメイトが父さん達に会いたいって懇願されたから来たんだよ」


 リンはため息混じりで言った。


「なるほどな。そうれはそうと、お前、俺達の事どれくらい聞いた?」

「え? 一から聞きたい?」


 そう言うとハルター背筋をぞわっとさせて遠慮した。


「基本的にそういう物語は都合がいいことしか書かれてないからな、そのままの出来事を書いたところで読者にとってはそこまで面白くならない、だからアレンジを加えて感動するような作品に仕立てあげるんだ」


「あーなるほど」


 (それなら物語の父さんの人物像も納得できるな)


「まぁ、題材が俺達って聞いて読んでは見たが、『誰だ? 』って思ったし、それが自分達と知った時は恥ずかしすぎて悶えたな、思い出すだけでぞっとする」


(まあ、なにも知らない人からみたら感動する作品でも基となった本人たちからみたら、言ってない筈の厨二病みたいな発言を言ったことにされてるような物だしなぁ……。俺だったら考えるだけで泣きたくなるね)


「その話は置いといて、皆を紹介するよ、入ってきて」


 リンは外で待ってた三人を家に入れた。


「は、初めまして剣神様! わ、私はヒストリア伯爵家のご令嬢のレーナです! 今日はよ、よろしくお願いします!」


 (めっちゃ緊張してるなぁ、早口すぎて噛んでるし)


「お、俺はヘカトール商会の御曹司のルクスです! 今日はよろしくお願いします!」


(こちらもかなりガチガチな御様子で)


「お久し振りです、ハルター先生、この度は急な訪問だが、余りお世辞とかしなくて結構だ」


(流石王家、こういうことには馴れてるのか。てか、先生? 剣術でも習ってたのか?)


「おう! 俺はハルター・ウォルコットだ! レーナちゃんとルクスだっけか? それと殿下、いつも息子が世話になって悪いな!」

「い、いえ! そんなことはないですよ!」

「寧ろ俺達がそうなりそうで」


 二人は慌てて否定した。


「まあ、ここで立ち話はするのもなんだ、家に入りな」


「「は、はい!」」


 そして俺達は家に入っていった。

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