休日の前の日にだけ会う愛しい『人』

 近すぎれば慣れて腐りはて


 離れる時はより辛くなるの


 だから適切な距離を持って向き合いましょう


 逢瀬は毎週土曜日 休日の前の日がいいの


 甘い時間。 トロトロと弛緩する肢体に蕩ける心と身体。


 絡ませて ただ静かに眠りあいましょう


 それだけが 世界で一番の幸せだと思う。


 たとえ誰もが否定しても 


 知ってしまえばきっと誰もが認めてくれる


 


 知らなければ不幸 知ってしまっても不幸かもしれない。


 それでも知ってしまえば離れられないの


 それでも限られた人生 長く付き合うには程よい距離が大事


 お風呂に入り、シーツを取り替えて ベッドの下でただただ横になっている


 それだけで幸せ。 ハッピーな気持ちが尾てい骨の辺りからフワフワと漏れ始めて私、幸せに瞳を瞑る。


 窓から吹く風 夜の香り 時折走る車の音 全てが綺麗 美しい


 飽和する幸福 口から漏れて また吸い込んで 循環する安心 また優しく呼吸。


 時計の針に撫でられて 悶えて 喜ぶ 休日の夜は明けて


 そしてまた明日へとボンヤリと運ばれて


  

  

 起きればあの人はもういない。 それでも胸に手を当てて残るあの人の残滓。

   

 辛い日々も 理不尽な生活も また始まる。 


 けれどあの人の思い出をここに。


 起き上がり大きく伸びをすれば、パキパキとした関節が目覚めて声を挙げる。


 それじゃ次の休日まで。 また会う日まで。


 去っていったあの人にメールをするように朝日を見上げた。


 約束された幸せを思って私は家を出る。


 未来はしばらくはきっと暗くない…はず。

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