愛しい貴女への返信

 恋人よ。 愛しい人よ。


 貴女という存在がただ愛しく、それだけが救いとなる真実があることを理解してください。


 けれど、傷口から流れるモノは消えることが無いでしょう。


 どうしようもない自分だからこそ、それが唯一にして真実。


 どうか私の胸に開いた穴を埋めるようなことはしないでください。


 背中から胸へとぽっかりと空いた穴から流れてくる風が私を傷つけていきます。


それこそが自ら望んだことなのですから。


 その傷口と痛みが貴女を苦しめることが心苦しいのです。 


ですがその苦しみがあるからこそ私が私たらしめているのです。


 貴女の願い。 私の願い。 決して交わることなど無い。 


それだけが残酷ではありますが明白な真実であり、そして喜びなのです。


 交わらず、結びあうことも永遠に私達の間ではありえないでしょう。


 それを悲しいと、苦しいと葛藤する心は私にもありますが、だからこそ私達は私達と言えるのですから。


 互いに決定的に違うからこそ、その差異を理解し、共に居られる方法を考え合っていく行為と想い。 


それこそが幸福だと私は思うのです。

 

 ですが、それは永遠ではないでしょう。


 いずれ貴女が耐えられなくなるまで。 


そして私が耐えられなくなるまで。


 有限の『今』を足掻いて生きていきましょう。 


無数の傷を互いに創り上げながら。

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