寝室から出て

なんて悲しみに満ちているのでしょう。 


痛みと羞恥に塗れた一日が始まります。


 それでも瞳を瞑り続けて過ごすには長すぎる。 


 スタート地点はいつもここ。 ベッドのある部屋から。


 起き上がろう。 大いなる不安と期待を着こんで寝室を出て。


 何も見ないことはきっと幸せなのでしょう。 


心動くことも無く、ただ死んでるように。眠っているように…と思ってしまうこともある。


 そうすれば傷つくことはないのだから。


 ただ視界を黒く閉じるだけで過ごすにはやはり長すぎる。 


 私は瞳を開ける。 大いなる悲劇を覚悟し、それでも喜びを期待して退屈を置き去りにしてまた寝室を出る。


 いつもと変わらない一日。 


 立ち向かえば転び、起き上がり、また転ぶ。


 それでも世界はふいに一変してしまうから歩きましょう。


 時には雨も降れば、風も吹く。


 それだけで当たり前の景色に彩りがまた一つ加わるのなら濡れることも服も汚れることだって一つの変化。


 僅かでも、ささやかでもその差異に喜びを見つけだそう。


 たとえそれが徒労でも、苦労にちょっぴり疲れても。


 そして日は沈み。 街はオレンジから黒に染まり、そして夜になる。


 一日は終り、闇がとっぷりと世界からかけられて一色に染め上がれば、疲れた身体を引きずって私はまた寝室へと戻る。


 ただ見続けるだけではきっと退屈してしまうから。


 休息するように。 逃れるように。 そして死んでしまうように。


 また朝になれば、また決心をして寝室から出て行くだろう。 


 そうして私は一日を生と死で輪転していくのです。

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