交差路のような僕らの道

遠くまで行けるよとあの人は言うけれど僕と来たら部屋のなかで閉じこもってばかり


車の助手席は私物で溢れてて誰も座ることなど出来ない


ふとオーディオから流れてきた彼女と一緒に聞いていたあの歌を思い出す


いつまでも一緒になんて赤くなる言葉掛け合ってた二人の道は違えて

君は別の誰かと結婚するんだと風の噂で聞いてる


思い出は甘く切なくて言葉なんて陳腐

でもそれでいいんだと思う


交差路のような僕達の生きる道にはそれが避けられないんだと今なら思えるから


目的地が違えばいつかは離れるけれどどこかで会えるかもしれないし君はこの空の下で笑っているはず


そう思う いやそう思いたいのだとサイドミラー写った男は寂しく微笑む




衰えなんて思いたくないけれど着実にそれは迫ってきてるのにテレビのあの人は変わらず歌っている


相変わらずな僕はそれをポカンと見つめながら最近覚えたタバコをふかす


不思議だね 付き合っているうちに君はタバコをやめたのに僕はそれを始めてる


何か変わりたいと思ったんだ

それが安直でも滑稽でも寂しさを癒すために口寂しさを誤魔化す滑稽さ


きみが嫌いだった僕の愚かさは相変わらずだよと画面に向かい苦笑した


目的地が違えばいつかは離れるけれどどこかで会えるかもしれないし君は同じ画面を見て笑っているはず


そう思い そう願い あいもかわらず僕は一人でここにいる



交差路のような僕達の生きる道

別れは絶えず来るけれど出会いだってあるはず


でも外に出て遠くまで行こうと思えないうちは苦い後味と煙に包まれていたいんだ


思い出に飽きるまでは静かに座っているとしよう


薄紫の煙が部屋に溶け込むまでは



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