骨組みだけ残して絶望が持っていく……その幸福について
一日が終わり目を閉じる。
するとどこからともなく絶望が私の枕元にやってくるのです。
それは影も無く形も無く、ましてや触れることも叶わず、ただただまるで剥ぎ取るように骨組みだけを残していつのまにか去っていくのです。
あとに残されるのはむき出しの骨。
路傍に晒されて風化しかけているようなボロボロのかつては生きていた動物の残滓であります。
何日も何十日も使って拵えた『着物』も涙を飲みながら取り込んだ『様々な肉片』もそんなものは存在しないのだと証明するように絶望が『私』という剥き出しの骨を露わにしてしまう。
そして私はというと朝になると、寒々とした空気に骨身を軋ませながら起き上がり、また『着物』と『肉片』をその身につけるために動くのです。
そしてまた夜が来ると絶望がそれらを持っていく。
なんと無駄なことでしょうか。
ですがそれを止めることはできないのです。
たとえ絶望が『肉片』を毟り取っていく痛みに打ち震えても、着物が剥ぎ取られて裸の『私』を見せられる屈辱に震えようとも、同時に私はある種の安心を感じ、またそれが私自身を動かすカラクリの糸になってしまっているのです。
ああ、人の情という『肉片』を無理やり取り込み、生活という名の『着物』を拵え、全てを夜には失う。
まさに骨身に染み渡るようなその『絶望の結果』こそが、『私』という剥き出しの存在がいることに気づかせてくれる。
そしてやはりそれは平素、私が味わうことの無い『幸福』という感情というものなのではないでしょうか?
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