父の日〜夢の国『ディズランド』午前〜
陽菜と弥生ちゃんと遊ぶ約束をした日になり、いつもより早く目を覚ます。確か9時に弥生ちゃんが来るはずだから、それまでに準備しておかないとな。
「パパ〜? ご飯できたから食べよ!」
「わかった。今行く」
陽菜に返事をして俺は椅子に座る。
「いただきます!」
掛け声をかけてから陽菜が作ってくれた朝食に箸を伸ばした。
いつもはお米なのに、今日はパンだった。
いつのまにパンを買ってたんだよ。気づかなかったぞ。
「今日は軽めのものにしたよ!」
「そうなのか?」
「だって遊園地で美味しい物たくさん食べたいもん!」
「そうだな。期間限定のスイーツとかもあるだろうしな。楽しみだ!」
「うん! もう行くこともないかもだし、うんと楽しまないとね!」
「いや、いつでもいけるだろ」
なんなら修学旅行とかでいけるだろうに。
そういや、陽菜たちの修学旅行っていつなんだろうか。
まぁ秋頃だったとしても、まだまだ先の事だし、気にする必要ないか。
「そんなに行けないよ! お金だってたくさんかかっちゃうし」
「まぁそれはそうだが。お金の事は気にしなくて大丈夫だぞ?」
「でも、1度行くだけで1万以上かかっちゃうんだよ? 流石に高いよ」
「確かになぁ〜」
「だから、しょっちゅう行けないよ」
「そうだな。たまに行くのが丁度いいか」
「うん!」
「そんじゃ早く食べて準備しますか!」
「そうだね!」
その後は時々話しながら、ご飯を食べ終えた俺たちは、準備を始める。
時計を確認したらもう8時20分だったため、急いで準備した。と言っても俺は着替えるだけで終わりだから、そこまで時間がかからない。
MA-1というやつに白無地の半袖、黒のスキニーパンツを履いている。
まぁこれは、前に野田に全身コーディネートしてもらったやつなんだがな。
「おー! パパおしゃれだね〜!」
「そうか? いつも通りだぞ?」
「いつもは、もう少し適当だよ!」
「確かに、そうかもな」
「いつもパーカーしか着てなかったよ! どうしちゃったの?!」
陽菜は驚いた感じで俺の事を見てきた。
そこまで驚く事でもないだろうに。
「確かにパーカーはよく着るが、流石に少しくらいはファッションに気をつけてるぞ!」
「今日のパパ、かっこいいよ!」
「ありがとな」
「うん!」
2人とも準備が終わり、後は弥生ちゃんが来るのを待つだけだ。
「そういや、今度陽菜の服買いに行こうぜ。流石に足りなくなってきただろ?」
「ふぇっ?! いいの?」
「おう。女の子なら、最低でも後何着かは必要だろ?」
「やった〜! 今から楽しみだよ!」
「おう」
そんな会話をしてると、インターフォンが鳴ったため、俺と陽菜で玄関に行き俺が戸を開けた。
戸を開けるなり、弥生ちゃんは頭を下げていた。
「遅くなってすみません!」
「いや、まだ集合時間じゃないし大丈夫だぞ?」
「いえ、10分前に来るのが普通かなと」
「まぁ俺とか陽菜と遊ぶときは、別にそこまで気にしないから、大丈夫だぞ?」
「わかりました!」
「そんで、もう行くか? それとも少し休憩してから行くか?」
「もう行きましょう!」
「んじゃ、行くか」
「はい」
俺たち3人は夢の国『ディズランド』に向かった。駅に着き、千葉行きの電車に乗った。幸い座席が空いていたため、横並びで座る。
席順は俺が端で真ん中が弥生ちゃん、その隣が陽菜の順番だ。
「そういえば、秋本さんってこの前フラれたんですよね?」
「なんで弥生ちゃんが知ってるんだ?」
「この前学校で陽菜ちゃんに教えてもらいました!」
俺は陽菜を睨みつけると、陽菜はその視線に気づいたのか、目を明後日の方向に向けていた。
後で陽菜は説教だな。
「そ、そうか。弥生ちゃん聞いちゃってたか〜」
「はい! なので、私が秋本さんの彼女に立候補しちゃおっかなぁ〜」
「やめとけ。こんなやつ引っ掛けてもなんもいい事ないぞ? 弥生ちゃんなら、お似合いの人だってすぐ見つかるよ」
「はぁ〜い」
「おう」
そんなやりとりを見ていた陽菜が、何故か頬を膨らませて俺たちのことをみていた。
「うーっ! 弥生ちゃんばかりパパと話して、私の事置いてけぼりにしないでよ!」
「悪い悪い」
俺と弥生ちゃんは陽菜に謝った。
「陽菜ちゃんは甘えん坊だね!」
「そんな事ないもん!」
「そんなこと言って〜。秋本さんが私ばっかりと話してるのを見て嫉妬してたんでしょ?」
「う〜! そんな事ないもん! と、とにかく、私も話に混ぜて欲しかっただけだよ!」
なんか、陽菜と弥生ちゃんがこそこそ話しているが、なんの話をしていたのだろう。
ま、まさか、俺の悪口か?! 近くで話したら息が臭かったよ、とか、汗臭くて無理とか言ってるのか?
ま、まさかな。弥生ちゃんが悪口言うわけないよな。もし悪口言ってたら、俺立ち直れない。
「な、なぁ。お二人さんや。なんの話をしてたんだ?」
「乙女の秘密でーす!」
「パパには絶対に教えないよ!」
「そ、そうか。まぁいいや、そろそろ着くし、降りる準備しとけよ?」
「はぁ〜い!」
千葉駅で降りた俺たちは、夢の国に行くためにまた電車に乗る。
意外と千葉って遠いんだな。隣の県だから、ちょっと楽観視してたわ。
やっと夢の国、『ディズランド』に着いた俺たちは、早速チケットを購入し、入場する為に並ぶ。
「やっぱり休日なだけあって、人沢山いますね!」
「ほんとにさ。多すぎだろ!」
「遊園地なんてこんなもんだよ? なんなら平日に行っても人は多いよ?」
ほんと、どうしてこんなに人が多いんだろうか。みんな夢の国好きすぎじゃね?
「とりあえず、どこから行くか決めるか!」
「うん!」
「最初どこ行きたい?」
「ウォーター・マウンテンに乗りたい!」
陽菜は最初からジェットコースターに乗りたいようだ。
「弥生ちゃんは、どこ行きたい?」
「私はどこでもいいですよ!」
「まじか。どこから行きたいとかってないのか?」
「はい! こうして遊べるだけで楽しいですもん!」
「そっか。そーゆー事なら、陽菜の行きたいところに行ってから、次は弥生ちゃんの行きたいところに行くか! 弥生ちゃんもどこに行きたいとか、決めとけよ?」
「は、はい」
「そんじゃ、最初は陽菜の行きたいところに行くか!」
「やったー!」
目的の場所に着いたのはいいが、人が多すぎる。やはり人気なアトラクションなだけあって、人もたくさんいる。
「パパ、これ、何時間待ちなの?」
「最低1時間は待つと思う」
「そっかぁ〜。弥生ちゃんもごめんね? こんな待つ事になるなんて」
「ううん。大丈夫だよ! 待ってる間、話したりするのも楽しいしさ!」
「そっか! それもそうだね!」
「うん!」
「午前中、二つくらいしか乗れないかもなぁ〜。フリーパスだっけ? あれ買うか?」
「そこまでしなくて大丈夫! 待ってるよ!」
「そうか? 弥生ちゃんも待てるか?」
「はい! 大丈夫です!」
その後、1時間以上話していると、やっと俺らの出番になった。
従業員さんの『気をつけて行ってらっしゃーい!』という声を聞き、出発する。
「そういや、これって濡れるんだっけ?」
「そうだよ〜。気をつけないとびしょ濡れになっちゃうかもよ?」
「それは嫌だな。それにしても、随分とゆっくりじゃないか? こんなもんなのか?」
「最後以外はぷかぷか浮かんでるだけだからね〜」
「そうなのか。なんか、ジェットコースターって感じしないな」
「そうだね! 」
その後何分かゆっくりと進み、急に下に落ちた為、びっくりしてへんな声が出た。
それを見て陽菜も弥生ちゃんも笑っていたため、恥ずかしくなってくる。
いや、びっくりしたんだししょうがないじゃん。
「パパ、ひえって。……あははっ」
「秋本さん、驚き過ぎですよ……クスクス」
2人とも俺を見て笑いを我慢できなかったのか、手で口元を押さえていたが、全く意味がなくなっていた。
「ちょっ、2人とも笑い過ぎだろ」
「ご、ごめんなさい」
「つ、次だ次。弥生ちゃん、どこ行きたい?」
「そうですね〜? お化け屋敷とかに行きたいです!」
「そんじゃ、お化け屋敷に行くか! 多分午前中はそれでラストだろ」
「そうですね!」
お化け屋敷に着いたのだが、ここでも少し待たないといけなかった。
さっきと比べれば全然待たなくていいから、そこは良かったが、それにしてもお化け屋敷か。あんまお化けとか得意じゃないんだよなぁ。
そんなことを考えていると、俺たちの出番になった。
「パパ、怖いよ〜」
入った瞬間から、陽菜が怖がり、俺の腕に抱きついてくる。それを見ていた、弥生ちゃんも、陽菜とは反対方向の腕に抱きついてきた。
「お、おい。2人とも。そんなに抱きつかなくてもいいだろ」
「だ、だって怖いよ!」
「そ、そうか」
その後もキャーキャーと、終始何かあるごとに悲鳴をあげる陽菜に対して、弥生ちゃんはそこまで驚いてはいなかった。
俺はというと、2人に抱きつかれていたため、お化け屋敷どころではなく、怖がる余裕もなかった。
「あー、怖かったー!」
「そ、そうか」
「叫びすぎてお腹空いちゃったよ」
「ならご飯にするか。弥生ちゃんもそれでいい?」
「はい! 私もお腹すきました!」
お化け屋敷を出た俺たちは、昼ごはんを食べにご飯屋を探すのであった。
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