相談
水原さんとの食事を終えた俺たちは、帰路についている途中だ。
水原さんとの食事は2回ほどしかしてないが、まさか仕事の話しかしないとは。まぁ、後輩に頼られてると思えば嬉しい事なんだが、欲を言えば普通の話とかもしたかった。歳下とはいえ歳の近い女性と普通の事を話すなんて、俺からしたらそうそうない事なのだから、仕事以外の話もしたかった。などと考えていたら、足まで止まっていたみたいだった。
「秋本さん?」
いきなり止まった俺を心配してか、水原さんが顔を覗き込んできた。俺と水原さんには身長差があるため、必然的に上目遣いになる。ワイシャツの第二ボタンくらいまで開けていたため、チラッと谷間も見えた。そのため、ガン見してしまう。ほんとーは目をそらせばよかったのだが、男の性なのか目を話す事が出来なかった。
下着の色が紫って、見た目によらず派手なのつけてるな。
「あ、ああ。悪い。考え事してたわ」
「そうなんですね」
「おう」
「ところで、さっきずっと私の胸見てましたよね?」
水原さんは俺の方に近づいてきたため、身体が触れそうなくらい近くにいる。
バ、バレてるだと。まぁ女性は目線に敏感だとよく言われてるし、あんだけガン見してたらそりゃー誰でもわかるか。
「あ、ああ」
「秋本さんのエッチ」
水原さんは自分の胸元を手で隠すような動作をする。
その動作に、一瞬キュンときたが、なんとか耐える。
「す、すまん」
「許しません……なーんて、全然大丈夫ですよ!」
「ま、まじで、大丈夫? 通報したりしない?」
「するわけないじゃないですか。そんな事で通報してたら、きりないですし」
「そ、そうか。ならよかった」
なんて言っている俺だが、今にも心臓が飛び出しそうだった。やはり、女性はどこを見られているのか分かるというのは本当だったんだ。今度から気をつけなければ。
まさか母さん以外の下着を見る日がくるとは思わなかった。……いや、陽菜のは見たことあるか。
「何残念がってるんですか。これから変態さんって呼んだほうがいいんですかね?」
「なんでそーなるんだよ。別にそのことについて残念がってるわけじゃないし」
「じゃあ何について残念がってるんですか!」
水原さんは何故か少しキレ気味なんだが、どうしたのだろうか。
「いやたいした事じゃないんだが、下着つけてるところ見たの母さんのしかなかったなぁ〜って思ってな」
陽菜の話は出さない方がいいだろう。というか、なんて会話してんだよ俺たちは。どう見ても道路でする話ではない。さいわい、周りに人がいないっていう所は唯一の救いだ。
「そ、そうなんですね。私のが初めてって事なんですね」
「まぁそうだな」
「……エッチ」
顔を赤らめて嬉しそうにそういう水原さんは、とても可愛らしかった。これが普通の話とかでならなおよかったのだが、今の話じゃ全く嬉しくない。
「ま、まぁこの話はここで終わりにしといた方がいいだろ。道路でする話じゃないしな」
「それもそうですね。この話はまた今度って事で!」
「お、おう」
「それじゃ、帰りましょう!」
「そうだな」
その後は、私生活の事など話しながら歩き、別れる場所についた。
「秋本さん、今日は私の相談を聞いてくれてありがとうございました!」
「気にすんな。これからもいつでも相談してくれて構わないぞ」
「ほんとーにいいんですか? 迷惑じゃないですか?」
「おう」
「……ありがとうございます! 明日からもよろしくお願いしますね!」
「……おう。こちらこそよろしく頼む」
「それじゃ、私帰りますね!また明日です!」
「おう、じゃーな。明日会社で」
そう言って俺たちはそれぞれの帰路につく。
普段水原さんと話すのは仕事以外じゃほとんどないのだが、比較的話せている気がする。妹みたいだと思っていたから話せているのかと思ったが、なにか違う気がする。
……まあ今気にする必要はないか。
「ただいま〜」
「パパ、おかえり〜」
いつものように陽菜が出迎えてくれる。毎回思うが、俺が扉を開けてから玄関に来てくれているはずなのだが、くるの早すぎじゃね? まぁ家が大きくないってのもあるだろうが、それにしても早すぎる。
「お風呂入りたいんだが、沸いてる?」
「沸いてますよ!」
「なら、風呂に入ろうかな」
「はい! いってらっしゃい!」
「おう」
俺は脱衣所で服などを脱ぎ、風呂に浸かった。
疲れた身体を癒してくれるような感じがして、随分と長い時間お風呂に入っていたみたいだ。
「さっぱりしたー!」
風呂から上がらと同時に声が漏れていた。今日の風呂は思わず声が出るほど気持ちよかったという事になるな。
髪などを乾かし、リビングに向かうと、そこには正座をした陽菜の姿があった。
「パパ、相談があります」
「なにがあった?」
「私に、アルバイト許可をしてくれませんか?」
なぜか敬語で話してくるので戸惑ってしまう。
アルバイト、ね。最近じゃコンビニとかスーパーで働いている高校生が多いとは知っていた。
「別にアルバイトする事はいいんだが、もしかしてお小遣い足りなかったか?」
「そんな事はないんだけど、どうしても自分で貯めたお金で買いたいものがあるんだ!」
「そーゆー事か」
「はい! それでその間の家事が疎かになっちゃうかもだけど、それでもしていいの?」
そういや陽菜がバイト始めたら、帰りが遅くなるのは当たり前で、そうなったら夜ご飯や風呂などの家事ができなくなるのか。
まぁ陽菜を引き取るまではそれが当たり前だったのだし、なんとかなるか。
「そこんところは気にするな。それでどこで働こうとしてるんだ?」
「うーんとね。本屋とかにしようかなって思ってる。ここから近い場所にあるからさ!」
「それなら安心だな」
「うん!」
「それで、陽菜はなにが欲しいんだ?」
「それは秘密!」
「そっか。まぁなんにしても、バイト経験があるってことはいいことだからな。頑張るんだぞ?」
「うん!頑張る!」
「おう!」
「後もう一つ相談があるんだけど、大丈夫?」
「ん? まだあるのか?」
「うん!」
「言ってみてくれ」
「今週の土・日、遊びに行きたいなぁ〜って」
「なんだそんな事か。それは別にいいぞ!」
「やった!! 3人で遊びに行こうね!」
なんか陽菜の口から3人って聞こえた気がしたんだが、俺の勘違いじゃないよな?
いや、遊びに行きたいというくらいの事で、相談したいことがあるなんて普通なら言わないか。
「3人? 俺と陽菜だけじゃないのか?」
「うん! 弥生ちゃんを入れた3人で遊びに行きたいなぁ〜って」
「その中に俺、必要か?むしろ俺邪魔じゃね?」
「そんな事ないよ! 弥生ちゃんもパパと遊びたいって言ってたし!」
そこは弥生ちゃん、断ってくれよ。なんで弥生ちゃんまで肯定的なんだよ。
「土・日って事は弥生ちゃんは泊まっていくのか?」
「うん、そうだよ!」
「そ、そうか」
「やっぱり、ダメ? だった?」
上目遣いで俺を見てくるため、断りづらい。
ほんと、俺陽菜の上目遣いに弱すぎだろ。
「いや、全然いいぞ。そんでどこ行きたいんだ?」
「水族館とか?」
「まぁその辺は弥生ちゃんと話して決めてくれ」
「はーい」
「俺はもう寝る」
「あっ、なら私ももう寝ようかな!」
先に俺がベットに横になり、その後に陽菜がベットに入ってくる。
その際、俺に正面から抱きついてくる。足まで絡めてくるため、身動きが取れない。
なんか、今日は一段と抱きしめ方が強い気がするんだが。陽菜のいろんな所がもろに当たっているんだが。最近じゃ俺が興奮していると、なぜか陽菜は嬉しそうにしている。
そろそろ抜いとかないとな、と思う俺であった。
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