学校 〜陽菜side〜

 空元気のパパを見送った後、私は学校に向かった。パパの事は心配だけど、これ以上踏み込んではいけないと昨日の私は思ってしまい、何も聞かなかった。


弥生やよいちゃん、おはよ〜」

「陽菜ちゃん、おはよ〜」


 いつものように弥生ちゃんに挨拶をしてから席に座る。

 弥生ちゃんは私と違い、顔はその辺にいる人の何倍も可愛く、読者モデルにでもいそうな顔つきだ。それに体型だって胸は少し小さいがそれ以外が完璧すぎて、どうやったらこんな完璧な子が生まれるのか知りたいくらいだ。

 そんな子と仲良くなれたのが奇跡だと思う。元々弥生ちゃんは、誰とでも仲良く話しているみたいだがら特別ってわけではないが、それでも嬉しい。

 唯一、秋本さんの事を話したのが弥生ちゃんだった。真剣に聞いてくれて、その時の私は嬉しすぎて少し泣いてたっけ。


「あれ? 陽菜ちゃん。今日なんだか元気ないね?」

「えっ? そうかな? いつも通りだと思うけど」

「私の勘違いだったかな」

「うん。そうだよ!」

「そういえば、最近秋本さんとはどうなの?」

「パパとは毎日楽しく暮らしてるよ!」

「ふーん、そっか……ってパパ?!」

「うん? パパはパパだよ?」

「秋本さんって、陽菜ちゃんを引き取ってくれた人だよね?」

「そうだよ!」

「パパっていうのは違うんじゃないかな?」

「パパはパパなの! 私のパパは秋本さんなの!」

「そ、そっか。なんか変わった事ある?」

「いつもパパと一緒に寝てるんだけど、最近は私から抱きついてるんだ〜」

「えっ?! 一緒に寝てるの? それやばいよ!」

「全然大丈夫だよ! パパから襲ってきたりとかはないから!むしろ私からが多いかな」


 私が発言すると、弥生ちゃんは軽く引いていたが、顔は赤くなっていた。

 どこに引く要素があったのかはわからないが、何かおかしな事でも言ってしまったのだろうか。


「それ、いつか絶対犯されちゃうって。陽菜ちゃん可愛いんだからさ! 男はみんな狼なんだからね!」

「パパ、私の事ガキだの言って、興味示してくれないから大丈夫! 20歳になったらわからないけど、今は何しても犯されないよ!」

「秋本さん、中々やるね。こんな可愛い子に抱きつかれたら反応しちゃうはずなのに、何にもしないとか、凄い!」

「陽菜ちゃんはいつからそんな変態になっちゃったの?!」

「でも、弥生ちゃんも変態だよね?」

「そ、それはそうだけどさ」


 弥生ちゃんはバツが悪そうにしていた。

 まぁ朝からなんの話ししてるんだとつっこまらればそれまでなのだが、いつもだいたいこんな感じだ。むしろいつもはもっと凄い。

 初めて弥生ちゃんが変態だと知ったのは、話してすぐの事だった。話し始めたきっかけは、席が近かったからだ。それから意気投合し、仲良くなった。勿論もちろんエロい事ばかり話しているわけではなく、基本は普通の話だが、たまにヒートアップするとこうなる。


「そろそろ戻るね! この続きは昼休みにでも!」

「うん! 待ってるね!」


 私は鞄から荷物をだし、机の中にしまう。数分後鐘がなり朝のHRが始まった。

 連絡事項があまりなかったため、比較的早く終わり、1時間目の準備をする。




 午前中の授業が終わり、今は昼休みになったため、弥生ちゃんと机をくっつけて向かい合ってご飯を食べている。


「秋本さんって、陽菜ちゃんがエロい事言った時とかどんな反応してるの?」


 聞きづらい事なのか、小さい声で話してくるため、私も小さい声で返した。


「顔赤くなってるよ! でも私が変なこと言ってもちゃんと聞いてくれるし、怒ってくれるんだぁ。それが嬉しくって、ついついエロい事ばっかり言っちゃう」

「そ、そうなんだ。というかいつもどんな事言ってるの?」

「うーん、普通に下着姿で一緒に寝ようとしたりとかお風呂一緒に入りたい! とかかなぁ」

「えっ?! 下着姿で一緒に寝ようとしてたの?! そんな事してたら犯されるからダメでしょ! お風呂とかはまぁいいとしてさ……ってお風呂もアウトだよ!」


 弥生ちゃんは自分でボケてツッコミまでやっていた。

 それくらい驚いていた。

 そりゃそうだろうね。誰だって驚くよね、こんな事言われれば。


「最初の頃は言ってたけど、怒られてからは下着姿になって寝ることはなくなったんだ」

「なんで陽菜ちゃんはそんな事言ってたの?」

「赤の他人の私を普通引き取らないよね? デメリットしかないじゃん。なら、私なりの恩返しとして身体を対価にしようとしたんだけどね、パパに自分の身体を大事にしてくれって言われちゃってさ」

「秋本さん、めっちゃいい人じゃん! 普通の男なら、こんな可愛い子が下着姿で布団に入ってきたら、我慢できなくてそのまま……って感じになるね」

「それに、一緒に寝ようって言ったのも私だし、お風呂一緒に入ろうって言ったのも私だがら、全て私が悪いんだけどパパは迷惑だなんて一度も言わないんだよね」

「秋本さんからしたら嬉しいんじゃない?」

「いつも自分の事大事にしてくれって言われてる。好きな人とそーゆー事しろってのもよく言われるんだ〜」

「私、一度秋本さんに会ってみたい! 今日とか行って大丈夫?」


 どうしていきなりパパに会いたいと言い出したのかはわからないけど、パパの事を狙っているのなら、それは友達として阻止しなければ。

 って、パパは高校生に興味ないんだった。なら大丈夫じゃん。


「大丈夫だよ! といっても、パパ仕事してるから帰ってくるの6時くらいになるけど大丈夫?」

「うーん、なら今日は陽菜ちゃんの家に泊まろうかな! 泊まっても大丈夫?」

「確認してみるね! といっても私、自分の部屋ないけど」

「大丈夫! 3人で寝れば問題ないよ!」


 弥生ちゃんは親指をたててニカッとしているが、こちらとしては問題でしかない。

 パパの隣は私がキープしとかないとね!


「確認とれたら、また連絡するね!」

「うん! 楽しみだなぁ」


 そう言いながら弥生ちゃんは食べ終わった弁当箱をしまっていた。

 少しして昼休みの終わりを告げるチャイムがなり、午後の授業になったのだが、私はこれからの事を考えるとあまり授業に集中できないのであった。





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