第12話 よくぞ参った。勇者ふるちんよっ!!2
国王が用意した宝箱のうち、俺は結局一つ目と二つ目の宝箱だけを貰った。
「本当に三つ目の宝箱はいらぬのか?」
「いらねぇよクソジジイ!!!」
「無礼ですぞ勇者ふるちん様!!!」
「そうです!!折角の国王陛下の御厚意なのです。ここは鞭とロウソクを受け取るべきです!!」
城の兵士達は鞭とロウソクをやたらと勧める。いらねぇ。女だけを寄越せ。
「今なら城の地下牢を御用意致します!!」
鞭とロウソクよりお前らの着ている鎧兜を全部寄越せ。
「まぁ待つがよい。そんなにいらぬというのなら仕方ない。代わりにちょっとつき合うがいいふるちん」
国王は俺を手招きした。そこは王の寝室だった。
「あ、すいません。俺ノンケなんで」
「儂もノンケだ。勘違いするな。そこのタンスの引き出しを開けるのだ。ふるちんよ」
ふざけたクソジジィに命令されるまま俺はタンスの引き出しを開けた。そこにあったのは。
「・・・パンツだ」
そう。それはステテコパンツだった。
「そのパンツを持っていくがいい」
俺はステテコパンツを手に取って見定めた。なんていうことだ。これは、ものすごい強烈な防御効果のある鎧じゃないか!!
「王様!あんたいい人だな!このステテコパンツはくさりかたびら並みの防御力があるぜ!!」
「そうか!気に入ってくれたか!!では勇者ふるちんよ!其方に良い事を教えよう!!武器や防具は装備しないと意味がないぞ。さっそく装備するのだ!!」
「ああ!任せてくれ!!」
俺はステテコパンツを装備した!!
「やった!ステテコパンツを装備できたぜ!!」
「これでお主は街中で警備兵に話しかけられて強制戦闘になることもなかろう。そのパンツがなければわいせつ物陳列罪で逮捕されるところであったぞ」
「ありがとうな王様!あんたは俺の命の恩人だぜ!!」
「では、改めて冒険の旅に旅立つがよい。勇者ふるちんよ!!!」
いつの間にか俺は感涙しながら王様の手を握り締めていた。
その様子を少し離れたところからももかんが冷ややかな瞳で見つめる。
「ところでももかんよ。其方にも渡しておく物がある」
「なんでしょうか王様」
ももかんは王様に尋ねた。
「儂は王としての立場上勝手に城から離れる事を許されておらん。そこでお主にこれを託そう」
それは一冊の本だった。
「それはふるちんの冒険を記録書じゃ。勇者ふるちんの旅の記録を詳細に記載し、儂に報告せよ」
「誰が記録するんですか?」
「もちろんももかんに決まっておろう。其方の旅の報告を儂は楽しみに待っておるぞ」
と、王様は部屋を後にしようとしたが。
「そうだ。ももかんよ。お主にも宝箱をやろう。この中にはひのきのぼうと布の服がはいっていて」
「いえ。私は既に魔力石のはめ込まれたロッドと朱塗りのローブがありますので」
「えー受け取ってくれないのー?」
国王は不満そうであった。
「年一回の新任兵士の就任祝いと、定年退職する兵士と、城勤めの兵士の結婚式や葬式に出席するくらいしか儂お仕事ないから暇なんだよね。ほら。王様って剣持ってモンスター退治とかやらないし」
「素直に現状に満足してください」
「しょうがないにゃあ。でも旅の記録はちゃんとつけるんだぞ。儂楽しみにしておるからな」
「はいはいわかりましたよ」
俺とももかんはそそくさと玉座の間を後にした。廊下に出ると女騎士だか女剣士だかよくわかない女性、俺を容易くノックアウトした女だ。彼女は若い男と話していた。若いと言っても20代後半くらいだろう。服装からして兵士、というより高級将校ぽい感じがする。
男の方が先に謁見の間から出てきた俺達に気づいた。
「裁判は終わったようだね。実は来月は父の誕生日でね。大人しく服役していればたとえ死刑判決を受けたとしても恩赦が貰えるだろう」
「父?」
「自己紹介がまだだったね。私はクロイソス。このサルディスの国の王子だ。来年で三十になるのに王子様を名乗るのはどうかと思うが、僕が国王に即位しないという事は現国王である父が健康であるという事だ。逆に喜ぶべきことだ。君は我が国の民ではないようだが、どうかこの国の未来が明るくあるよう
喜んでほしいものだ」
「んで、その王子様が俺になんかようか?」
「まだ僕はふるちん君の判決を聞いていないのだが?」
誤解を解こう。俺は自分が安紅鷹飛アンクタカトという名前である事。19歳である事。そして何よりふるちんという名前でない事を説明した。
「そうか。ふるちん君はこの世界を救う為、異世界からやってきてくれた勇者だったのか!!」
「いや。無罪なのを理解してくれたのはいいが俺の名前はふるちんじゃないから」
ていうかこいつもあっさり信じるんだな。
「すまないな。今年は千年前に倒されたはずの魔王が復活するちょうど千年目。君が異世界から勇者としてやってくるのは当然だったのに。その活躍を機会を奪ってしまってすまない」
「はっ?どういうことだよ?」
「魔王を倒してしまったのは、実は私なんだ」
「え、なんだって?」
「詳しい事はガラ。君から話してあげるといい」
そう言って解説をビキニアーマーの女騎士に預けるとクロイソス王子は去って行った。
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