魔王城攻略には子猫を

第012話『まおうのいえで 1』

「ミレアちゃんってよくあんな凄い魔法をたくさん使ってるのに魔力切れにならないですよね?」



 翌朝。

 俺たちは朝イチでギルドに溜まり、ジュースを飲みながら『掲示板更新』を待っていた。


 毎日8時頃に掲示板に掲載されているクエストが更新される。

 今日、俺たちが受けようと思っているクエストは『捜索系』だ。


 報酬金のペリアは少ないもの、どれも短時間でクエストクリアが可能で討伐クエストを1つこなすより、捜索系クエストを沢山クリアした方がランクアップ効率が良い。――――――で、それよりも魔力? の話だっけ?



「そもそも魔力切れになったらどうなるの?」

「うーん。まず過呼吸状態に陥ります。その状態で無理して動いてしまうと死に直結してしまう可能性もあります」



 おぉ…………。

 ここら辺はRPGゲーム等と違い、かなり厳しいものなんだな。 魔力回復の聖水を携行しまくるのが勝利の鍵だな。

 …………って。それはゲームの話であってこれの話とは訳が違うんだよな。


 

 それにしても魔力かぁ。

『聖剣』に『異常魔法火力』に『基礎パラメータ補正』。


 ここまで主人公補正があるなら『魔力』って概念も無さそうな気がするが…………まぁ、気にかけてはおこう。


 ………と、話しているうちにギルド掲示板がギルド員により、全て手作業で更新されていっていた。――――ティッシュ配り並みに辛そうな作業である。


 残ったジュースを片手に掲示板の前に立つ。そして俺は早速お目当ての捜索系クエストを発見し、掲示板から剥がす。



「『・魔王を探して下さい・報酬金2000ペリア︰特徴は以下の通りです』」



 魔王探し?

 わかり易いのでツッコミは敢えてしないが、魔王探しなくせして報酬金のペリア安すぎね? どんだけ小価値なんだよ魔王。


 少々呆れ気味でティアと共に魔王様の特徴をみる。



 ・性別は女


 ・身長は140cm程度


 ・服装はゴスロリ


 ・特徴はアホ面で角が2本生えていて貧乳


 ・好きな物は特に無く、餌を与えればすぐによってきますのでよろしく。

 依頼者︰メイド



「「……………」」



 この依頼主のメイド、絶対この魔王様のこと嫌いだろ……………。


 にしても身長が140cmで女性…………俺みたいな奴だな。



「ま。面白そうだし発注するか」

「そうですねッ! 魔王様に会ってみたいですし」



『魔王』ねぇ。

 魔法や魔獣が存在する世界ならいてもおかしくはない存在。


 基本的に魔王は恐ろしくグロテスクな容姿を想像してしまう。――――なのでより一層、ロリっ子魔王様に一目会ってみたいと俺も密かに思っていた。








 ♢








 …………いざ軽いノリで受けたもの。



「手掛かりゼロで探すのって無理ゲーだろ………」



 たしかに迷子になっている魔王様の特徴はよく分かった。…………だが『どこら辺で迷子になった』とか『よく行く場所』とか知らないと探せないでしょう?。直感的中探偵じゃあるまいし。


 今回の報酬金2000ペリアがあればティアの武器、戦闘用斧に手が届くんだ。――――よしっ。そう考えたら俄然やる気湧いてきたぞ。


 …………と、やる気は出たもの、宛がないので取り敢えず街をぶらつく。

 

 何気なく野菜市場を通っていると、ある八百屋のオジサンが目に入る。何やら小さい子とお話をしているようだった。



『じゃあ嬢ちゃん、このスイカ600ペリアとトマト120ペリアを足したら何ペリアだい?』


「あ、ミレアちゃん。 オジサンが小さい子に足し算を教えていますよっ!」

「そうみたいだなぁ」



 小さい子のお使いついでに足し算の勉強を教えるオジサン。マジ人間のかがみですよ。


 その光景を見ているだけで微笑ましい気分になる。――――と、しばらく見ているとコスプレ衣装みたいな服を着た女の子がニコニコしながら指を使い、計算を始めていた。…………さてさて、ちゃんと正解できるかな?



「うむうむっ、600たす140は…………2400・・・・じゃ!!」



 あちゃー、間違っちゃったかー。

 にしても子供の頭脳って不思議だよな。 どうなったらその答えが出てくるのやら。すると、八百屋のオジサンはニコニコしながら、



「おぉ、不正解だなぁ。 じゃ、お会計2400ペリアでッ」

「うむっ。承知したッ!!」



 ―――――っておいッ?!

 あんた人間の鑑じゃなかったよ、悪魔だよッ?! 小さい子から金を巻き上げるクソ野郎だったよ?!



「―――――いやいや、はいオジサン。740ペリアっと」



 会話の間に入り、代わりにお金を支払い、小さい子の腕を引っ張ってティアが待つ場所まで引き摺る。大人として詐欺行為は見逃せませんっ!!


 ティアのもとまで女の子を運ぶと、俺の腕を解こうと暴れ始める。



「このっ!! 離すのじゃぁ!!」

 

「…………っと、おい。ちっとは黙ッ―――――れ………?」

「ミ、ミレアちゃん? 顔が怖いです―――――よ………?」



 …………と、カッとなりかけた時だった。 きっとティアも気づいたのだろう。


 ゴスロリ姿。身長は俺ぐらい。そして――――額から2本の角が生えている。



「な、なんじゃ? そんなに見つめられるとてれるのじゃ」



 あれ? たしかにアホ面だ。

 …………ってことはこいつが『魔王様』――――――――なのか?

 




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