激闘

 パワードギア<黒鋼クロガネ>は強化外骨格に近いが、公安、自衛隊、秘密結社<天鴉アマガラス>が共同開発したひとり乗りの戦闘用ロボット兵器である。


 <刀剣ロボットバトルパラダイス>というネットゲームのボトムストライカーと似ているという指摘もある。

 実は公安のある部署がロボット兵器のシュミレーションでそのゲームを創ったという噂もある。


 全長四メートルの<黒鋼クロガネ>が大地を踏みしめ、次の瞬間、ローラーブレードでアスファルトを

蹴った。

 ローラーブレードが唸り声を上げて、人狼に一直線に突っ込んでいく。


 <黒鋼クロガネ>が肩口から人狼の身体に体当たりした。

 人狼は衝撃で吹っ飛ぶかと思われたが、両手で<黒鋼クロガネ>を受け止める。

 前回よりパワーアップしてるのか、驚異的な力で<黒鋼クロガネ>を捕まえて投げ飛ばした。

 逆に数メートル吹っ飛ばされた<黒鋼クロガネ>はよろめきながら体勢を立て直す。 


(安堂君、大丈夫?)


 秘匿回線で神沢優から映像通信が入る。


(意外と手ごわいな)


 モニター越しの映像で、ゴーグルの下に見える安堂光雄の頬に汗が流れているのが見えた。


(前回よりパワー、おそらく不死身度も上がってるかもしれないわ。再生する度に凶悪度が増してるわね)


 神沢優は眉をしかめる。


(でも、倒すしかないですね)


(そうよ。私が後ろから<七支刀>で斬りつけるから、安堂君は正面から格闘戦をお願い)


(了解です)


 安堂光雄がうなづく。


 神沢優は光学装甲ステルスのまま背後から近づいて奇襲するつもりだった。

 が、人狼は気配に気づいたのか、振り返って、鋼鉄に匹敵する爪で逆に襲いかかってきた。


(まさか、見えてる?)


 神沢優はあわてて跳び下がる。

 が、それが仇になったのか、人狼は音を頼りに位置を特定したように的確な攻撃を仕掛けてきた。

 

 何とか<七支刀>で爪を跳ね返したが、行き止まりの路地に追い詰められていく。


(このままでは……ジリ貧ね)


 不意に人狼の動きか止まる。

 心臓を<黒鋼クロガネ>の正拳が貫通して胸から突き出ていた。

 さすがの人狼も前のめりに倒れた。

 

 <黒鋼クロガネ>の正拳には特殊な呪術結界が仕込まれていて、神沢優の<七支刀>同様の呪的効果があり、心臓の再生は難しかった。

 息も途絶えているように見えた。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る