ジュヴナイルズ・ランドスケイプ ~数奇なる魔女とエソライズムエンジン

学倉十吾

序章

第1話

 さながら闇のような少年だった。長く艶やかな黒髪が風にたなびいて、戦火の炎を残酷にも照らし返していた。

 闇夜に溶け込む漆黒の着衣。反して、肌は生命の脈動を感じさせないほどに青白く、しかししなやかな筋肉が皮下に張りめぐらされていることを見る者に訴えかけている。

 少年の顔を飾る黒き仮面〈贖罪の冠ペルソナ〉は、背負ってきた過去すら覆い隠すかのように陰を落とし、戦闘機械としての鋭利な眼光を、冷徹なまでにその奥へと押し込めていた。

 さながら闇の眷属を彷彿させる少年がこの刹那、有象無象の軍勢を前に、遂に抜刀する。

 そうして凶宴の狼煙のように、呪文めいてその唇に口遊まれる。

 ――我は、裁き、斃し、屠る者。


「あらゆる敗北の物語は、この俺が覆す。さあ、逆襲の幕開けだ――」


 これは、いつしか〈黒き逆徒〉と恐れられた、昏く黒き、そして孤独な少年の物語。

 その少年の名は――――


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