第3話

 今日は凜子に山尾花体育館に呼び出された。どうやら卓球の大会が近いうちにあるらしく、その練習相手を探しているみたいだ。

「凜子、彼氏ができたんだろう? 俺と二人きりで会っちゃまずくないか?」

「前もって教えてあるから大丈夫。それにただ、練習するだけだし」

「でも俺で大丈夫なのか? 俺は高校に入ってから部活はしてないし、卓球だって週に1回体育の時間にする程度、しかもほとんどお遊びみたいなもんなんだぞ?」

 自分じゃ練習相手にならないだろうに。他の元部員をあたらなかったのだろうか?

「別にそんなの気にしない。ウチは練習ができればそれでいいの。さあ始めるよ?」

 練習を開始した。現役で続けている凜子に対して柳地は中総体以降まともに卓球をしていない。最初のうちはミスを連発した。

 だが、しばらく打っていると体が当時の感覚を思い出し始めた。見よう見まねで習得した兄のサーブも打ち込むことができ、スマッシュも決めることもできた。

「やっぱり柳地は卓球、上手いじゃん!」

 そう言う凜子の動きも鋭い。中学時代とは比べ物にならないくらい上達している。しばらく見ないうちに随分と成長している。

 1時間ほど打ったあと、休憩をした。

「今日も帰ったら勉強だなあ」

「また柳地、去年からそればっかり! だからああなったの忘れたわけじゃないでしょう?」

「そりゃあ忘れないよ。でも俺、今彼女とかいないし。凜子みたいにうるさい奴も学校にいな…いや、1人いるなあ」

「どんな子?」

「男だけど」

 凜子にも森谷の話をしようとしたが、

「柳地は学校でモテないの?」

 と聞いてきた。

「そうだな…。特に告白とかはされないから、モテないかな。でもわかんないところ教えてとか、時間割聞いて来たりとかする子はいるけど」

「なら少しはモテてるんじゃない? この前愛海から柳地は頭が良いって聞いたから女子にちやほやされてるんじゃないかと思ってたけど…」

「ああ、5組の木村愛海きむらまなみね。同じ山尾花中だったあの。そんなこと言ってたんだ? 俺は周りができないだけだと思うよ。それに一々ここの問題が、時間割がってうるさいとしか俺は思ってないよ」

 凜子は白い目で柳地を見て、

「そんなこと言ってると一生彼女できないよ?」

 と言う。

「でも、一度は凜子と付き合った。一生ってのは間違いだ」

「もう。そういうのはやめた方がいいって」

「そう?」

 会話が終わると2人は練習を再開した。

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