ワイルドカード【氷柱世界のアルガスル】

楠木黒猫きな粉

最終証明の始祖開示

「全部凍った。何もかも残らない」


すべてが溶けない世界に1人。すべてが溶けない世界に少年は物思いにふける。


「戻ってこないものもあったかもな。けれどこれが僕のやるべきことだから」


少年は自らの行為を見つめ直し正当化をする。


「これが終わりの記録だ。けれど終わるのなら始まりがあるはずだ」


氷の塔の上に座り少年は手を伸ばす。届かなかった未来を思って。


「こんな溶けない世界に1人とか、思いもしなかったけどね」


誰かを思う事も出来ない世界。少年は塔の上に立ち世界を見渡す。

凍える世界に1人。凍った時間に1人。何も残さないように最期を口に出す。


「さぁ、決別を証明しよう。誰も残さなかった結末の証明を終わらせよう」


言葉を紡ぐ。最終証明を開始する。


「【最終定理証明完了ワイルドカード】」


最後は決定された。終わりが決まった。なら、やり直そう。初めから。


「氷柱少年が決定を下す。最終証明は完了した。荒ぶる答えは決定された。未来は閉ざされた」


———だからもう一度の始まりを与える


「さぁ、次は間違えるな。これは最終証明にして解答のない問いだ」


最悪の決定jokerにして当たり前の正義。


「【始祖開示ワイルドカード】もう二度とこの結末を起こさせない」


終わりが完遂された世界で始まりを開示する。

少年はこんな世界に最期の文句を言う。


「僕はこんな結末望んでなかった」


少年の頬を伝う涙をこの世界は気づく事も出来なかった。



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