【3000PV突破!】錬成技術インフィニティな俺が異世界でハーレムを作るまで

白宮 御伽

第1章 転生者と気まぐれの女神

 音が聞こえる。

 周囲の騒音と、急ブレーキの音。

 そして……。


 ――声が、聞こえる。

 ――俺を呼ぶ声が。


 ――消えていく。意識が、感覚が、記憶が。

 ――体が溶けていく、光に。


 ――俺は、どこにいるんだ?

 ――俺は、どうなったんだ?


 ――俺は……。


『……目を開けるか』

 幸い、目は明けられるようだ。

 瞼から光が漏れている。きっと明るい場所にいるのだろう。


 そして、俺は、目を開けた。


~~~


 目を開くと、そこはただの白い空間だった。

 本当に、そうとしか言い表せない場所に、俺はいた。

 遥か彼方まで障害物が一切ない空間。上を見上げても天井はなく、ただただ真っ白な空間が続いている。

 

「……?」

 

 頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

 俺の恰好を見てみたが、ちょっと汚れているだけの黒い学生服。

 いつも学校へ行くときに着用しているものだ。


「何があった?」

 いまいち状況把握ができず、その場に座り込む俺。

 


 すると、どこからか楽しそうな声が聞こえてきた。 


「はーい、力塚 純騎りきづか じゅんきさん、いらっしゃいませ~!」

「!?」

 俺の背後から声が聞こえてきた!?

 さっき、俺が見まわした時には誰もいなかったぞ!?


 声のした方を振り向くと、白いロングヘアーの長身の女性が笑顔で立っていた。


 女性は俺が振り向いたことに気づくと、大きな声でこう言った。

「やっほ~!元気ですか~!?」

「……」


 ぶっちゃけ、明るすぎるノリは俺は苦手だ。

 それに、いい歳の女性がノリノリでピースサインするなよ。


 いつのまにかにらみつけている俺を見て、困り顔で頭をかく女性。

「えーっと、なにがなんだかわかってないようですね~。

今、自分が起こってる状況を把握してないとお見受けします~」

「だからなんだよ」


 俺はマイペースすぎるやつは苦手なんだ。

 とっとと家に帰りたい。


 そんな俺の心境はお構いナシに、彼女は俺のもとに近づきながら得意げに話を進める。


「ま、しょうがないですね~。『私が記憶をちょちょっと操作しましたからね~』」

「……は?」

 つい、間抜けな声が出る。


 『記憶』? 『操作』?

 何を言ってるんだこいつは。


「……いい病院紹介してやろうか? 脳外科か精神科の」

「ひっど~い! 私、女神ですよ!? その扱いひどくないですか!?」

「つったってなぁ……」


 頬を膨らませて怒る自称女神を呆れながら見つめる俺。

 セーラーワンピースの上からでもわかるほどスタイルはいいのに……。

 頭が粗末なのが問題だな。


 だからといって、自称女神を相手にしているほど俺の心は広くない。


「……じゃあ、証拠見せろよ、証拠」

 ギロリと彼女をにらみつけ、そういう俺。

 しかし、彼女は怖がる様子もなく、下手な演技でもやっているような慌て方でこう返した。


「ありゃりゃりゃ…そんなにらまないでくださいよぉ! 私、超絶か弱い可憐な美少女女神ですよ!?」

 その後、「じゃあ、証拠をお見せします!」と笑顔で白いワンピースのポケットから球体を取り出した。

 その球体は、鈍く赤黒く光っている。


 いきなり球体を見せつけられても、俺には何もわからない。

「……なにこれ」

 当然の疑問を投げかけると、女神はわざとらしく咳払いをした後にこう言った。


「これは、私が操作していた貴方の記憶です! 今から、失っていた記憶をお返しします!」

 

 そして、彼女は大きく手を振りかぶり、こう叫ぶ。


「いっけー! 女神式魔球第36号!」


 恵まれたフォームから放たれる剛速球。

 反応する間もなく俺の頭めがけて一直線。

 そして……。


 ゴリッ


 という気分が悪い音とともに俺の頭にヒット。

 その後、跡形もなく頭の中に吸い込まれていった。



「……!!」

 その刹那、俺はすべてを……思い出した。

 俺は、あの時……。

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