応援コメント

第8話 夏至祭」への応援コメント

  • こちらの作品を拝読するのは二度目になります。
    当時、強い没入感と言いようのない喪失感があり、言葉にすることを諦めてしまいました。
    しかし、ずっと心に残りつづけていた作品で、もう一度拝読したいと考えました。
    今でも自分の語彙では表現しきれないのですが、感想をお伝えさせてください。

    美しい文章で静かに進んでいく回想。
    ウスバカゲロウやシカなど、要さんが自身を重ね合わせているような場面があり、生と死について何度も考えさせられました。
    そんな要さんを見る大人たちの様子は、どこか異様で恐ろしく感じます。
    「僕」の不安が無自覚に、しかし確実に募っていくのが感じられて、作品世界に深く引き込まれました。

    要さんが神域の淵に入るシーンが非常に印象的でした。
    この場面は、アリジゴクとの対比もあるのでしょうか。命を引き寄せているようでもあり、自身の命を捧げているような。美しく儚げに映りました。
    また「僕」が引き延ばされた時間から我にかえる心情描写がとても切なかったです。
    個人的な感覚で恐縮なのですが、このシーンは何故か坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」のピアノ旋律を想起しました。小説を読んでいて音楽が聞こえてくる感覚は初めてだったので、貴重な体験をさせていただきました。

    「僕」が西の町を離れつつも、夏至祭になると戻るのは、要さんを忘れたくて忘れたくない複雑な心情が表れているのではないかと思いました。

    素晴らしい作品をありがとうございました。
    他作品も拝読させていただきます。
    長文となり、失礼しました。

    作者からの返信

    ずい分昔のことで記憶も曖昧なのですが、「雨だれ」「星降る夜」、確かそんなお題で作品を書く企画に向けて書いたものだと思います。小説らしい文章を書きたいとずっと思っていてなかなか書けなくて、だから「美しい文章で静かに進んでいく回想」という言葉が、とてもうれしいです。語り手の「葉介」も記憶が曖昧なので、ところどころうろ覚えの語りがあります。その辺りも不安を煽るような効果があったでしょうか。雄大で無慈悲な自然とちっぽけな生命の対比を、現実から少しズレた、因習にとらわれた幻想的な世界の中に感じ取っていただけたなら、書いた人間として幸いです。短編で、背景の説明を全然していなくて、でもその分読んだ方の想像が広がるかな、なんて勝手に考えていましたが、青草さんのように丁寧に読み取っていただけると、照れるようででもうれしいです(笑)。二度もお読みいただき、丁寧な感想までいただいて、ありがとうございました!

  • sakamonoさま、ご無沙汰しています。以前、思い入れのある作品としてご紹介して頂いていたこの妖篇を、さきほど初めて堪能させていただきました。
    エロスと恐怖とペーソスに深く沈んだ影模様のような傑作ですね。世界観も独特で、ふた昔くらい前の山村世界が写されているようでいて、電波塔の赤い航空灯や図書館の描写など、時おり、終末風景を思わせるようなかすかなSF香も漂い、現実から踏み外された物語世界へといざなわれて行きました。星々や山女魚の青い幻想性もちろんですが、ラスト10行の味わい深さにも心打たれるものがありました。
    この「夜を拾いに」というメランコリックなタイトルのアルバムの「日常から地続きの異界へ」というコンセプトは友未にとっても実に共感深いもので、sakamonoさまの力量から察するに素晴らしい短編の宝庫ではないかと想像されますので、超に超の付くスローペースではあっても、一作目から順に読み継がせて頂きたいと愉しみにしている所です。
    また、こうした本格的でシリアスな本来の意味でのファンタジーは、近年片隅に追い遣られつつあるようですが、隠れファンは必ずどこかにいるものですし、幻想文学継承の意味でも、一篇一篇にばらしてでも、自主企画など、あらゆる機会をとらえて、今後とも根気強く発表し続けて行って頂ければと願わずにはいられません。

    作者からの返信

    こちらこそ、ご無沙汰しています。この作品に今まで、いろんなコメントをいただいていますが「終末風景を思わせるようなかすかなSF香も漂い」といった観点のコメントをいただけることが少なくて、とてもうれしく思っています。日本のどこかの山村が舞台のようでいて、実は「異世界」なのだという思いで書いていたので。この短編集、この作品のような雰囲気のものを書こうと考えていたのですが、どうも奇妙にとぼけた感じのものが多くなってしまいました。一話完結のつもりだったのが、連作っぽくなってしまったり。「日常から地続きの異界へ」という物語を書きたいと思っているのですが、「日常」←→「異界」と、くっきり別れてしまう感じで(その方が容易で)、なかなかうまくいきません。幻想文学と呼べるくらいのものに昇華できればよいのですが。最後に過分なお言葉までいただき、モチベーションも上がってきました。お読みいただき、ありがとうございました。

    編集済

  • 編集済

    素晴らしい読書体験をさせて頂きました。
    「崖の上にはブナやナラの雑木があって、植林された杉ばかりの不愛想な山に、この場所だけ表情があるようだった」の一文が好きです。
    今夏、書籍化して欲しいNo.1作品です(ほんとです)。
    質問なのですが、サヤおばさんが鉄パイプを握っていたのは、どうしてなのでしょうか?要の力に関係しているのでしょうか?
    後半、あっという間で(文章の迫力がすごくて)、正直ちゃんと理解できていないです。
    追伸:今読み返していて、「供え物」という言葉をしっかり捕えました。なるほど、祐一郎たちは要を守ったのですね。

    作者からの返信

    私の住むところは山に近くて、その山は植林された杉ばかりで、そんな山を見慣れていたものだから、初めて白神山地を訪ねた時、山がもこもこと丸い形をしている! と思ったものでした(杉の植えられた山は尖って見えます)。葉介の視点だけで背景の説明がまるでありませんが、この世界の空気を感じていただければ、という思いでした。なので、しっかりと読み取っていただけて、とてもうれしいです。古い因習に縛られて人身御供になるところだった要を逃がした……ということなのですが、もう少し説明がある方がよいですね(笑)。お読みいただき、かなり過分なお言葉もいただきました。ありがとうございました。そういえば、今日は夏至ですね。

  • いつもの@sakamonoさん作品だと、お山の中で紛れこむ妖しの国って感じですが、今回はそこにもうひとひねりある設定ですね。終末感漂うSF的近未来、を感じました。
    シカの解体がとても詳しく書かれていて、これは体験したことがあるのですか? とても興味深かったです。要の文字を「西の女」とバラしたのも、シカ(をバラすの)と重ね合わせて面白いなあと思いました。
    そしてサヤさん、こちらにも登場✨ 色々な作品で違う役割を少しずつ与えられているサヤさんを見かけるのは、@sakamonoさん作品を読む楽しみのひとつとなっています。

    作者からの返信

    「荒廃した未来社会」といったテイストが背景にある。そんな雰囲気を少しだけでも出せないかと、その部分については無理して書いた(かもしれない?)作品であります。でも私が書くと、どうも土俗的というか和風というか、そんなテイストになってしまいました。ポストアポカリプスという感じにはなりません。山で獲れたシカの肉をいただいたことは度々あるのですが、自分自身が解体の場に立ち会ったことはありません。解体のシーンは調べて書きました。鹿肉、おいしいです。漢字をバラすことの暗喩とするつもりはなかったのですが、なるほど! そう言った方が深みが出ますね(笑)。似たようなタイプの人物には同じ命名をしてしまうみたいで、少々引き出しが少ないのですが、いわゆる「スターシステム」ということで(笑)。お読みいただき、ありがとうございました。

  • 滝の淵と要のシーン…唐突に、強烈に脳裏へ入り込んできました。

    >僕は違った場所の違った時間の光景を見るように…
    いや、まさにそんな状況に突然陥りました(笑)
    文章表現だけでなく、鮮明なビジョンがsakamonoさんにあったのだろうと感じた自分は、おそらく感受性が強いのだと思います。(ので、軽く流してください(^^))

    ふおお~(語彙力低下)
    そして、最後…切なさが身に沁みます。

    作者からの返信

    何と、とてもうれしい言葉をいただきました。ご推察の通りです。最初に、あの滝のシーンのイメージがあって、そこにつなげるために、どんな物語を作ろうか、と考えていったからです(一応、あのシーンがクライマックスです)。何度も書き直した甲斐がありました。お読みいただき、ありがとうございました。

  • 男子は短命で女子は長命。「死の恐怖から逃れるために記憶が曖昧になるんだ」という設定。興味深く読ませていただきました。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。そういえば、私が読ませていただいた作品も、記憶にまつわる物語でしたね。私の場合、この設定をもう少し物語に生かせればよかったのですが...。