七歩の才

「見事な詩であった。よって、死一等を免ず」


 皇帝は告げる。


「去れ」


 蒼ざめた罪人は無言で立ち上がると一人その場を後にした。


「しかし、七歩で本当に詩を作るとは思いませんでしたな」


 臣下の言葉に皇帝は呟いた。


「我が弟にできぬと思うか」


 日が翳って兄の顔を暗がりに閉ざした。


 *「三國志」の曹丕と曹植兄弟がモデルです。「七歩の才」の故事は史実ではない可能性が高いそうですが、二人の関係性をよく示している気がします。

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