おじさん、休む④

お じ さ ん ! !



「ぬおっ!?」


今まさに砂嵐の中へ全ての意識を引きずりこまれかけていた男の視界は、一人の女の子の甲高い叫び声によって一気に色のある今に引き戻される。


腕に残る微かな痛みに視界を下に移すと、ふくれっ面で男を見上げるパフィンの姿があった。


「んもー!パフィンちゃんが呼んでるのにムシしちゃいけません!」

「あ、あぁ……ごめんごめん。少しぼんやりしてたよ」


慌てて繕うように笑う男に、目の前にいたアカリが怪訝そうに男の顔を覗き込む。


「あの……大丈夫ですか?もしかしてお疲れとか……」

「ああぁいや!本当そういうのじゃないんですよ!ただ、客としてパークに入ったのが久しぶり過ぎて昔を思い出したもんで、つい、その……」


アカリからふわりと漂う香りに一瞬胸が高鳴るのを隠すかのようにあたふたする男は、半ば早口になりながらも言い訳じみた言葉を口にする。

その様子が余程滑稽に映ったか、アカリは思わずクスリと含み笑いを漏らす。


「そんなに慌てた姿、初めて見ました」

「え?あ、あ……あはは……」

「んもぉー!!」


遅れて羞恥心がこみ上げてきた男が顔を赤くして苦笑いを浮かべていると、我慢が効かなくなった子供のようにパフィンが二人の手を引っ張る。


「おっとと……!」

「きゃ……!」

「いつまでもここにいたらつまんないですよー!早くいっしょにあそびましょー!」


頬をむくれさせてグイグイと腕を引っ張るパフィンに、二人は顔を見合わせる。

それがどうして可笑しかったのか分からないが、顔を見合わせた二人はふっと笑い合い、一度パフィンの手を離させてはその小さな手を握り返す。


「早く早くー!」

「よーし、今日はおじさんとガイドさんといっぱい遊ぼうか。まずはどこから行こうか?」

「お任せください!どこから回って行けばよりパークを楽しめるか、ガイドたる私がしっかり教えちゃいますよ!」


パフィンが二人と手を繋ぎ、さながら親子のような雰囲気を醸し出しながらパークの奥へと歩いていく三人。

道行くヒトやフレンズ達がたまに本当に親子と勘違いする事もあったが、アカリが慌ててそれを否定しては茶化されるという流れを周りの人達は好奇の目で見守っていた……らしい。



〜〜〜〜〜



所変わって火山の麓。

一晩かけてようやく麓周辺の森林へと這い下りてきたソレは、何かを探すようにドロドロとした身体に浮かぶ一つの大きな目をキョロキョロと動かす。


“会イニ行カナキゃ”


本来ならば言葉を発しないはずのソレは、女性のそれにも似たか細い声で一言だけ呟くと、道なき道を再びゆっくりと這いずり進んでいく。

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