月にそっと…

ぺるそなを

19年後の月

同じ月を見れるのは19年後だと

何かの映画だったか、

小説だったかで聞いた事がある。


だからどうって話でもないが、

あの夜の月は僕にとって、

特別なものだったように思える。


今となっては見かけなくなった

電話ボックスから見上げた

何とも言えない悲しげな満月。


僕の心がそう見せただけで、

本当は悲しくもないし、

満月でもなかったのかもしれない。


あの月と再会したら、

今度は何を話そう?

19年分の思い出を話そうか?


あの夜から僕はどうやって

歩いてきたのだろうか。

道を間違えてはいないのだろうか。

何処に向かっているのだろうか。


数時間後に15歳になる、ある日の夜。


受話器を持つ手は

ひどく震えていて、


番号の最後の一桁が

どうしても押さなくて。


交わした言葉は、

ごくごくわずかで、


見上げた空から

僕を見てる月がいて、


僕はその月を掴もうとして、

そっと手を伸ばしてみた…


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