第5話 ー時転の章 5- 風俗って何歳からだっけ
「おい、おーい。聞いてるッスか。
「あ、ああ悪い悪い。ちょっと待っててくれ」
俺は、脱いだ服を探す。だが、そこに置いてあった制服がない。なぜだ、どういうことだ。
「あ、あれ。俺の制服、どこいったんだ?」
「も、もしかして、盗られたんじゃないでしょう、か。めずらしい南蛮の服でした、から」
ひでよしがおそるおそる、こちらに言ってくる。
「ちょっと、え、なんでだよ。どういうこった。俺、ぱんいちなんだけど!」
「ははっ、こりゃおもしろいッス。変わったふんどしっすけど、力士なんだし、気にすることはないッス」
笑い事ではない。このまま、ぱんいちで過ごせっていうのかよ。
「ちょっとまってくれ、一張羅なんだ、あれ以外、服がないんだよ」
「んー、まあ、宿舎にいけば、代わりになる服があるっすよ。それまで辛抱するッス」
「よ、よかったですね、
よくねえよ。それにカバンも財布も全部、盗られちまった。畜生。盗んだ奴、おぼえてやがれよ。
その後、俺とひでよしは、
ぱんいち姿の俺を眼福とばかりに、町の妙齢の女性たちがじろじろ見てくる。あの俺、女性の視線には慣れてないんでかんべんしてください。顔を赤くし、下をうつむきながら歩くと、くすくす笑われる。
「あれ、
化粧をした女性が5、6人、集団を作り、なにかの店の前でたむろしていた。なんだろう、いい匂いがする女性たちだ。
「
「そうさね。きなくさい世の中ほど、うちらの商売は繁盛するもんだからね。まあ、金もってないやつの相手はお断りだけどね」
「へへ。また給金が入ったときにはお願いするッスよ。今月は金が要り用で、あまり行けなくてすまないッスよ」
「あら、残念。そこのボウヤたちは、どうだい。遊んでいかない?」
遊ぶ。遊ぶってなんだろ。この時代の遊びに詳しくない。
「ああ、そのなんだ。カードゲームとかすごろくのことか?」
ぷふっあはははっと盛大に女性たちは笑う。あれ、なんか俺、おかしいことをまた言っちまったのか。不思議そうに困惑する俺にひでよしが助言をしてくる。
「あ、あの。そういう遊びではなくて、この方たち、遊女です。ですから、その」
遊女。遊女ってのはたしか。ああああ
「お、おまえら、なにけしからんこと、い、言ってんだ」
「あら、ボウヤ、やっと意味がわかったのかい。ということは、あなた、初めてなのかえ?」
「ふふっ。取って食おうってわけじゃないよ。なに顔を赤くしてるのかえ」
「
「お、おい。おれはこう見えても18なんだ。子供扱いはやめてくれ!」
みんな、目を丸くして、再び大笑いしはじめる。
「あはは。18にもなって女の経験がないってことは、あんた、部屋住みかなにかだったのかえ?」
部屋住み。部屋住みってなんだ。ああ、よくわからない単語がぽんぽんでてくる。国語辞書があればなあ。
「まあ、
「ああ、そんなところッス。家にいても出る目もないから、信長さまの家臣になったッスよ、こいつら、さっき」
おやまあという顔を女性陣はする。
「じゃあ、将来のわたしたちの常連さまになるわけかえ。それはからかってわるかったわ。これからは
俺は蛇に睨まれた蛙よろしく、捕食者に目をつけられてしまったようだ。
「まあ、姐さんがた。その時は、こいつらのこと、よろしくッス。でも、はまりこまないように注意はしてほしいッス」
「お、おい。俺は、初めてはかわいい彼女と夕日が見える丘でキスをしてからだな」
「妄想は大概にしとくッス。お前も
あとから聞いた話、ある兵士が女性に乱暴狼藉をしたとき、信長がすっとんでいき、首をはねたそうだ。怖い怖い。俺はそうならないと思うが気を付けないとな。
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