サイバーセキュリティコンについて――JNSA本川さんとの対談
スニーカー編集さんによるプロットの講評が終わった私は一先ず元の席に戻り、後ろを伺います。
そこにはJNSA本川さんの姿がありますが、当然のようにミーティング参加者と話していました。
質問の受付が始まった瞬間に我先にと動く数人の方がいらっしゃったので、先に講評会を済ませようと考えた私は当然の如く待たなければいけません。
という訳で質問の順番待ちをしていたのですが、その時に他の参加者の方と少しだけ話す事ができました。
講評会が予想よりもあっさりと終わってしまったので、他の方はどんな感じだったのか気になったのです。
質問待ちをしている方々はサイバーセキュリティ小説コンテストに参加するつもりの人だろうし、プロット講評会も同じくコンテストだったのではないかなと話しかけてみた所ビンゴ。良かった。(笑)
計二人の方に聞いてみましたところ、御二方とも私と同じように『キャラクター』についての指摘を受けた様です。
やはりキャラの魅力に意識を置いているのでしょうか?
以前、本エッセイで角川スニーカー文庫について調べましたが、今回のコンテストでも世界観・キャラ・ストーリーのどれかに「オリジナリティ」を感じさせるような設定を付けて欲しいのだと思いました。
なんて事を話したり考えている間に私の番が来ました。
講評会の時と同じようによろしくお願いしますと挨拶して早速質問してみます。
第一部と第二部での話を聞いて私が一番気になっていたのは、やはり『小説で描く技術』についてです。
簡単に言えば、私の考えている作品では「現実ではありえない技術」を前提としたストーリー展開をしており、これは技術者から見てアリなのかを聞いてみたかったのです。
ところがここで予想外の事態が発生。
具体的に「こんな技術を作中で使っているのですが……」と話始めたところで本川さんが、「ああ、あのプロット書いた人? あれはアリだね。良いと思う」と直ぐに答えてくれたのです。
え?
今回提出したプロット読んでたの!?
これには流石にビックリしました。
さらに、「確か~っていう内容だっだよね? ~は良いと思ったけど、~はもっと考えた方が良い」といった、聞こうと思っていた事以外にも本川さんから率先して自分の意見を話し始めてくださったのです。
――おぉ……めっっちゃ考えてくれてる!
正直に言って、私は小説に関してはスニーカー編集の人の方がプロだし、技術者の方々はどういった基準で選考するんだろうか、といった事しか考えていませんでした。
しかし、ここでこの考えを大きく修正します。
――凄い本気だ。少なくとも本川さんは本気で良い作品を創ろうと一緒になって考えてくれている。
第一部では、コンテストに既に応募されている作品について「あれはこうした方がいいな、これが足りないなとそれぞれの作品で色々と思ったりもしています」と軽く話していらっしゃいましたが、あれもマジなのでしょう。
一つ一つの作品を真剣に受け止めて、その作品を良くするためにはどうすればいいかしっかりと意見を持っていると感じました。
さらに!
「JNSAのTwitter宛にDMなんかで『これについて技術的にどう思うか?』といった質問を送ってくれれば直接答えますよ」とまで仰っていました。
サイバーセキュリティ小説コンテストに参加する(している)皆さん。
作中で描く技術に関して何か少しでも疑問に思ったらJNSAへジャンジャカ質問を投げつけた方が絶対得です。
割と本気で断言できます。
閑話休題。
さて。
私の気になっていた点に関してはアリだと分かったのですが、それに関連した別視点においてもご指摘を頂きました。
曰く、『どうしてその技術が生まれたのか、どうしてそういった環境になったのか、そういったバックグラウンドが弱い』。
つまり、トンデモ技術はあってもいいがどうしてそれが生まれたのかしっかり考えろ、という事でした。
これは私も後回しにしていた部分でしたので仰る通りだと思います。いえ、痛い所を突かれたというのが正しいかもしれません。
第一部でも『現実の技術から広げた大ウソの技術』という話をしていましたが、この大ウソを如何にして本当っぽく見せられるか、専門家を含めた読者に違和感を持たせないための設定を考えているか。
そういった点にこそ気を配って欲しいのでしょう。
また、技術ばかりに目が行くと忘れがちになるのが『手段』、という指摘もありました。
例えば、車を乗っ取るためにはウィルスを使ってハッキングする、という考えを使うとします。
ここでは車をハッキングするために「どのようなウィルスを作ればいいか」だけでなく、車に『ウィルスを侵入させるにはどうすればいいか』も考えなければならない、という事です。
むしろ、ウィルスの性能やら凄さはウソであっていいのです。
実際には(—なんか専門的な説明をされていましたが良く分からず―)なのでハッキングされてもブレーキがかかるが、小説ではこのプロテクトすら打ち破って車を完全に支配下に置く事にしても問題ない。
しかし、車に侵入するやり方にはリアリティがなければならない。
何故ならば、この侵入方法がリアルであればあるほど、読者は「こんな方法があるのか、気を付けよう」といった考えに至れる。
即ち『サイバーセキュリティの啓発』という本来の目的に達する事ができる、というのです。
そこまで全く考えていなかった私は正に目からウロコでした。
いや、本当に。なるほど、と。
そういった考えから、設定を支えるネタは現実の物・技術から広げたほうがイメージもしやすい。
また、中々見る事のできないサイバー企業の施設を見学する事で、そもそものネタに繋がるような発想が出てくれれば良いなと考えているそうです。
想像以上に有益な話を聞けたので若干圧倒されてしまいましたが、ここで、本川さんにプロット講評会でも聞いた事について聞いてみました。
まず、AI vs 人という考えなのですが、どうやら本川さん的にはAI=敵でも全く問題なさそうでした。(笑)
マトリックスなどの作品を挙げ、そういった対立構造の作品は多く存在しているので小説としても十分にアリ、だそうです。
ただ、ここでも先ほどの車の例に出した『手段』について問われました。
つまり、AIと戦闘をする、倒すというシーンを書く時にどのように倒すのか、という事はよく考えて欲しいそうです。
先ほどと同じように考えるとウィルスでAIを倒すとするならば、ウィルスをどのようにAIへ仕込むのか、という事ですね。
「DDoS攻撃でAIの処理能力を低下させ、その隙にウィルスを仕込む」などの簡単な具体例を挙げて下さいましたが、一貫して現実味のある嘘について語られていました。
このあたりから、「あなた、本当は小説について勉強しているのでは?」という想いが私の胸中に湧いてきましたが黙っていました。(笑)
次にキービジュアルがファンタジー風なので気になっていた、「サイバーセキュリティを異世界などのファンタジーに置き換える」事について聞いて見た所、少し以外な答えが返ってきました。
というのも、本川さんはプログラミングと魔法は親和性が高いというのです。
プログラミングは習得するためにその法則性やルールを学び、実行するためにもプログラムコードを必要とします。
これに対し、魔法も習熟のために授業を行い、呪文や詠唱を行って魔法を実行しています。また、プログラマーをウィザードとも呼びますね。
これらの点は異世界などのファンタジーの考えに置き換えやすい、という事でした。
このように、技術の置き換えを行って「サイバーセキュリティ」を表現しても全く問題ないそうです。
私としてはプロットに書いてあった事を割と肯定的に捉えて頂けていたので、このコメントも有難かったです。
ここまで話して約10分ほどでした。
主に本川さんに語っていただけたので、私は脳内に内容を記録させるのにいっぱいいっぱいでもっと長い時間を喋っていたと感じたくらいです。
それほどの情報量でした。正直、ボイスレコーダーで録音したかったくらいです。本気で。
今回の突発的な質疑応答コーナーだけでも今回のミーティングに参加した意味はあったなと感じました。
その他のコンテストや編集部に関する情報が圧倒的に少なくなってしまったのは、まあ、仕方ないですよね。
はい、言い訳です。すみません。
さて、これにて「カクヨムユーザーミーティングvol5. ミーティングレポート」を終了いたします。
いかがでしたでしょうか?
本エッセイが何か貴方にとって為になる情報を提供できていれば幸いです。
次回は、5/13に行われる「サイバーセキュリティ小説コンテスト説明会」について! かな? 恐らくですが。
はい、私、行ってきます。(笑)
先着順だったのでさっさと申し込みしておきましたよ!
宜しければ次回も本エッセイをご覧になってくださいね。
ではでは。
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