第2話 忘れてるやん


あざやかなオレンジの夕暮れにくり抜かれた校舎の影。その道を歩いて帰る僕の後ろから声がした。


「藤田くん…!」


名前を呼ばれて、振り返ったら美女がいた。

隣のクラスの山崎さん。


「好きなの」


たった4文字で僕のハートは奪われた。


「山崎さん……!」


心臓が鼓動するだけで何も言えない僕に山崎さんは


「返事はまた明日で…」


と言って走っていった。

鳴り止まない心臓を抑えるのに5分かかって、山崎さんを追いかけた。

山崎さんの後ろ姿を見つけたその瞬間、僕は声を聞いた。


「村田くん…好きなの……」


バスケ部キャプテン村田に山崎さんが告白をしていた。

え?

驚いて僕は物陰に隠れた。

5分前僕に告白した山崎さんが、違う男に告白している?これは夢だろうか?

しかし、そのはずもない。


「返事はまた明日で…」


そう言ってまた山崎さんは走り出した。

心臓の鼓動を抑える村田を無視して、僕は山崎さんを追いかけた。


すると、サッカー部のエース田辺が山崎さんの前を通った。


「田辺くん…」


山崎さんは田辺を呼び止めた。

また僕は物陰に隠れた。


「好きなの…返事はまた明日で…」


そう告げて山崎さんはまた走り出した。

フリーズする田辺を無視してまた僕は山崎さんを追いかけた。


すると、担任の谷川先生が通りかかった。


「谷川先生…好きなの…返事はまた明日で…」


固まる谷川先生を背に山崎さんは走り出した。追いかける僕。

学校を飛び出してもなお、山崎さんは止まらなかった。街を走りながら山崎さんは、散歩中の男性、コンビニ店員、警察官など様々な男に告白していった。


そして、いりくんだ路地に入った時、僕は山崎さんを見失ってしまった。

走り続けて注意力が散漫になってしまったようだ。心臓は先ほどとは違う意図で激しく鳴っている。

山崎さん、これは一体どういうことなんだ?君は何がしたいんだ?


ばかばかしくなって帰ろうとした時、後ろから声がした。


「藤田くん…」


後ろには山崎さんが立っていた。


「な、何?」


恐る恐る聞いてみた。


「好きなの…返事はまた明日で…」


山崎さん、最初に告白したこと忘れてるやん。。。








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