第3話 幸せのマグロ
そのマグロを食べたものには幸福が訪れる。私が釣り上げたのはそう噂される、幸せのマグロだった。
小さくて目が暗く黄色い。ぴちぴち跳ねていながらも、決して逃げようとはしていない。
船の上で1人、私は興奮していた。
「間違いない!このマグロを食べれば幸せになれる!」
そう思って私は包丁を取り出した。
思えば冴えない人生だった。30年間、彼女や出世といったものから疎遠で、なんとなく親の仕事を継いで漁師になった。
これからは…!
マグロを左手で抑え、思いっきり包丁を振り下ろした。
しかし、マグロには当たらず、勢い余って私は左手を切ってしまった。驚いて船から落ち、サメが寄ってきて頭を食われた。その衝撃で船が転覆し、幸せのマグロは海へ逃げ出した。
「よかった。昨晩共食いした幸せのマグロのおかげだな。幸運だったぜ。」
幸せのマグロはそう思って幸せそうに海を泳いでいった。
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